ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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国際局開発機関課長 今村 英章/課長補佐 阿部 正流/開発機関第二係長 三宅 陽裕1はじめにアジア開発銀行の第51回年次総会が、5月3日(木)から6日(日)の4日間、フィリピンの首都マニラにおいて開催された。ADB総会は、各加盟国の総務(財務大臣など)が年に一度会合する機会であり、1966年に東京での創立総会、1968年の第1回年次総会以降、毎年開催されている。今回のADB年次総会には、ADBに加盟している67か国・地域の財務大臣、中央銀行総裁や政府関係者、財界、学術関係者、報道関係者、国際機関、NGOなどが多数参加した。ホスト国のフィリピンからは、ドゥテルテ大統領が5月5日(土)のレセプションを主催したほか、ドミンゲス財務大臣(フィリピン総務)が議長としての役回りを担った。我が国からは、麻生副総理兼財務大臣(日本国総務)、黒田日本銀行総裁(総務代理)をはじめとする日本政府代表団のほか、金融機関関係者や報道関係者、NGO等が参加した。2総会の概要(1)総務セミナー5月4日(金)に開催された総務セミナーでは、「技術変化、グローバリゼーション、アジアの雇用」とのテーマの下、BBCキャスターのゼイナブ・バダウィ氏がモデレーターを務め、麻生大臣のほか、フィリピン、インドネシア、フィジーの総務及び中尾総裁がパネリストとして参加し、活発なディスカッションが行われた。セミナーの中で、麻生大臣は、技術革新を雇用の創出につなげていく必要があり、そのための経済基盤の整備において、「質の高いインフラ投資」が大きな役割を担う旨を強調したこうした「質の高いインフラ投資」を更に推進するための新たなイニシアティブとして、(1)来年の日本議長下のG20を見据え、「質の高いインフラ投資」に係る原則を、ESG(環境、社会、ガバナンス)を前面に出し、ガバナンスについては、Responsible Financing(責任ある貸付・借入)や開放性をハイライトし、アップグレードしていく考えであること、(2)「質の高いインフラ投資」の包括的な支援メニューを提示し、途上国による主体的な「質の高いインフラ投資」の実施への助けとしていくこと、(3)国際協力銀行(JBIC)に、ESG投資という世界的潮流に着眼した新たな支援ファシリティを創設し、再生可能エネルギー分野も含め、地球環境保全目的に貢献するインフラ整備を幅広く支援していくことを表明した。(2)開会式5月5日(土)の午前に行われた開会式では、議長のドミンゲス比財務大臣は、マニラにADBの本部が置かれていることはフィリピンにとって大きな誇りであり、ADBとフィリピンのパートナーシップが同国の経済発展に大きく貢献したとの謝意を表明した。また、ADBが過去50年にわたるアジア・太平洋地域の経済発展の過程で重要な触媒機能を発揮してきたこと等を強調した。次に、中尾総裁は、2017年のADBの業務内容を振り返り、アジア開発基金(ADF)と通常資本財源(OCR)の資本が統合されたこと、年間業務量が200億ドルを超えたこと等を報告した。現在策定中の次期長期戦略である「戦略2030」に関しては、(1)貧困や格差への対処、(2)ジェンダー平等の加速化、(3)気候変動・災害強靭性・環境持続性への対応、(4)都市の住みやすさ向上、(5)地方開発及び食料安全保障の促進、(6)ガバナンス強化、(7)地域統合のアジア開発銀行第51回 年次総会について30 ファイナンス 2018 Jun.

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