ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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国際局国際機構課長 三好 敏之/国際局開発機関課長 今村 英章2018年4月19日~22日にかけて、アメリカ合衆国・ワシントンDCにて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下「G20」)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世銀・IMF合同開発委員会(DC)等の国際会議が開催された。以下、本稿では、G20、国際通貨金融委員会及び世銀・IMF合同開発委員会に関して議論の概要を紹介したい。1G20(2018年4月19日-20日)今回のG20では、世界経済、「仕事の未来(Future of Work)」、「アフリカとのコンパクト(Compact with Africa)」のテーマについて議論が行われた。今回の会議は、米国の追加関税措置に対し中国が対抗する姿勢を見せる等、貿易摩擦への懸念が広まる中開催され、その議論に注目が集まっていた。「世界経済」のセッションの議論は、保護主義的な政策に関するものが大宗を占めた。麻生副総理兼財務大臣は当該セッションにおいてリードスピーカーを務め、保護主義的な内向き政策はどの国の利益にもならず、保護主義的な措置に対する報復行為等の応酬は、金融市場の混乱を招きボラティリティを高める等説明し、自由で公正な貿易を通じて世界経済の成長を高めていくことが重要である旨発言した。他の多くの諸国からも同趣旨の発言があり、内向き政策に対応するための国際協力の重要性がおおむね認識された*1。本年のアルゼンチン議長下で優先議題と位置づけられている「仕事の未来」のセッションにおいては、麻生大臣より、技術の進歩によって労働市場が予測困難な形で急速に変わっていくのであれば、人的資本の強靭性を高めていくことが重要である旨を発言し、日本*1) 今回会議ではコミュニケは採択されなかったが、後にアルゼンチンが議長総括を公表している。においても、今後消費税率の引上げ増収分を活用して、幼児教育の無償化や低所得層を対象とした高等教育無償化を実施するとともに、再教育、リカレント教育の拡充等を実施し、人的資源への投資を拡充していくこと等を説明した。昨年のドイツ議長下で開始された、アフリカへの民間投資の喚起を目的とした「アフリカとのコンパクト」のセッションにおいては、麻生大臣より、日本は、セネガル、エチオピア、モロッコ、コートジボワールの4か国において、税務執行に関する技術支援等の貢献策を実施しており、特に、日本がこれまで取り組んできた「質の高いインフラ」の整備の支援を中心に貢献をしていきたい旨、発言した。2国際通貨金融委員会 (2018年4月20-21日)国際通貨金融委員会(注)においては、世界経済の動向等について議論が行われた。(注) 国際通貨・金融システムに関する問題についてIMFに助言及び報告することを目的として1999年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第37回目。麻生大臣はリードスピーカーを務め、世界経済が引き続き堅調に推移する中、残存するリスクに対応するため、各国が脆弱性の解消に向けた取組みを推進していくことが重要であり、引き続き、金融、財政、構造政策のすべての政策手段を用いることが適切である旨、発言した。足元の日本経済の状況に関しては、ファンダメンタルズは堅調であり、経済の好循環が回り始めた旨を述べ、日本経済の最大の難関である少子高齢化の克服に向けて、働き方改革や生産性革命、人づくり革命等に取り組んでいくことを説明した。また、財政の持続可能性を確保するために実効性の高い国際会議の概要について2018年4月19-22日開催、於:アメリカ合衆国・ワシントンDC28 ファイナンス 2018 Jun.

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