ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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の間に集中的に財政健全化に取り組み、遅くとも2025年度までにPB黒字を安定的に確保しておく必要があると提言されている。2財政健全化に向けたこれまでの取組の進捗状況政府は、経済・財政再生計画*2の下、2016年度から2018年度までの3年間を集中改革期間として、財政健全化の取組を進めてきた。建議では、同計画の下、3年間の歳出改革の目安*3が達成されたこと、その中で予算の徹底的な効率化、より政策効果の高い施策への重点化など、予算の質の向上が図られてきたことが評価されている。他方、消費税率の10%への引上げの延期、計画策定時に見込んでいた高い名目経済成長率が実現しないことに伴う税収の下振れ、補正予算の編成といった歳入・歳出両面の要因により、国・地方のPBの改善は進んでいない。建議では、こうした成功・失敗両面の経験とその要因をよく踏まえて新たな計画を策定するべきであると指摘されている。3新たな財政健全化計画についての考え方以上を踏まえ、新たな財政健全化計画についての提言が行われている。まず、基本的な考え方・枠組みとして、ア.2021年度までの3年間において、改革の取組を集中・加速させること、イ.国の一般歳出、社会保障関係費、地方財政について、毎年度の予算編成の指針となる歳出の水準に関する規律を設けること、ウ.各歳出分野の個別の改革について、新たな改革課題も含めて具体的な内容・工程を定めること、エ.3年間の取組の進捗状況を検証し、必要に応じて歳出・歳入両面からの追加措置を検討すること、の4点が提言されている。このうち、イ.の歳出の水準に関する規律に関して*2) 骨太方針2015(2015年6月30日閣議決定)の第3章。*3) 経済・財政再生計画では、2016~2018年度の3年間にかけて、国の一般歳出の伸びを1.6兆円程度、うち社会保障関係費の伸びを1.5兆円程度に抑えること、及び地方の一般財源の総額について、2018年度までにおいて、2015年度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保すること等を目安としている。は、少なくとも、経済・財政再生計画の目安の考え方を踏まえ、今後も歳出改革をしっかり進めることで、目標を確実に達成できるように設定すべきとされている。また、新たな歳出増加要因に対しては、他の歳出の抑制等、安定財源を確保して対応すべきとも指摘されている。加えて、・PB黒字化の確実かつ安定的な達成に向けては、消費税率の10%への引上げを約束通り実施することが大前提である、・税収が想定を下回る可能性などを踏まえて、歳出改革を徹底することが重要である、といった提言がなされている。また、補正予算については、安易な編成を厳に慎むべきである、との考え方が示されている。その上で、仮に編成せざるを得ない場合には、財政健全化目標に及ぶ影響をしっかりと認識・考慮した上で、厳しい財政規律を堅持すべきとされている。政府としては、建議に示された上述の考え方も踏まえ、具体的かつ実効性の高い新たな計画を策定し、その計画に則って、今後とも真摯に財政健全化に取り組んでまいりたい。財政制度等審議会財政制度分科会の審議風景 ファイナンス 2018 Jun.27

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