ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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ロ) 対外直接投資残高は、米国、アジア(除く:中国)向けを中心に急増。また、オランダ向けの比重が増加旺盛な本邦企業の海外投資を反映し、直接投資の残高は1996年の30兆円から2017年の174兆円へと約6倍の規模に拡大した。特にアジアや米国向け直接投資が倍増している(図13)。直接投資残高の増加に伴い海外から受け取る収益もアジア、米国、欧州を中心に拡大している。直投収益率でみると、米国と欧州は4%から6%近辺で安定的に推移しているのに対し、中国やアジアの収益率は2000年代に急上昇し、10%を超える水準となっており、アジアの成長を取り込む姿が鮮明になっている(図14)。海外直接投資先のうち、オランダやケイマン諸島などはそのGDPを遥かに超える規模の直接投資の受入・実行を手掛けていることから、いわゆる「導管国」として知られている。これらの国に対する投資は、その先に真の投資先*3) 他通貨のシェアは小さいため、ここでは勘案しない。国がある可能性が高く、統計を分析する際には留意が必要である。例えば、最近の我が国の対外直接投資残高に占めるオランダの比重が高まっているが、その一部は我が国から第三国への直投がオランダを経由しているに過ぎない可能性が高い。また、自らのGDPの数倍にも上る直投を我が国から受け入れているケイマン諸島のような地域は、直投の太宗が経由である可能性が極めて高い(図15)。7国際収支と為替イ)貿易為替が貿易数量にあまり影響を与えていない点は前述したが、貿易収支が為替に与える影響についても留意が必要である。貿易決済に使われる通貨は、ドルと円が大部分を占め、ドルは輸入におけるシェアが輸出よりも高い一方、円決済は輸出におけるシェアが輸入よりも高い。このため、通貨別の収支を見るとドルの赤字と円の黒字が圧倒的に大きい*3。これは、貿易取引に起因す(図14)地域別直接投資収益率の推移-4%-2%0%2%4%6%8%10%12%14%199620002004200820122017アジア中国米国欧州(出所)財務省「国際収支統計」、「本邦対外資産負債残高」(図13)直接投資残高(資産・地域別)の推移020406080100120140160180200199620002004200820122017米国中国アジア(除中国)オランダ欧州(除オランダ)その他(出所)財務省「本邦対外資産負債残高」(図15)日本からの直接投資残高(対各国GDP比)1,202%964%872%258%174%24%19%16%14%14%0%200%400%600%800%1,000%1,200%1,400%BritishVirginIslandsCaymanIslandsMicronesiaMarshall IslandsBermudaLuxembourgSingaporeNetherlandsThailandLiberia(注)ヴァージン諸島、ケイマン諸島、バミューダ諸島のGDPは2016年、それ以外は2017年を使用。(出所)財務省「国際収支統計」、IMF、国際連合 ファイナンス 2018 Jun.23

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