ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
24/96

3貿易収支の要因分析イ)輸入数量は減少しにくい輸入金額への影響は、数量変化よりも価格変化の方が圧倒的に大きく、為替の影響も大きい(図1)。主要な輸入品目である鉱物性燃料をみても、輸入価格と為替が輸入額に与えるインパクトの大きさが見て取れる(図2)。近年、鉱物性燃料の輸入数量は安定的に推移しており(図3)、結果として原油価格等の変化で輸入額が左右される構造となっている。*1) 輸出代替―日本で生産した製品の輸出に替わり現地生産を行う。*2) 輸出誘発―現地生産向け部品等の輸出を行う。ロ)輸出数量は増加しにくい輸出についても同様に、輸出金額は、数量よりも価格の変化の影響の方が大きく、また、為替によっても(輸出数量の変化を通じてではなく、円建て換算を通じて)左右される(図4)。輸出数量が増加しにくい背景には、生産拠点の海外移転の進展が考えられる(図5)。リーマンショック前は、海外生産化に伴う「輸出代替」*1と「輸出誘発」*2がほぼ均衡し、輸出数量の減少は抑えられていたが、近年、部品等を含めた「地産地消」が進み、輸出誘発が起きにくくなっていると考えられる(図6)。(図3)主な鉱物性燃料の輸入額・輸入数量の推移0204060801001200510152025302008200920102011201220132014201520162017(出所)財務省「貿易統計」(2010=100)(兆円)原粗油液化天然ガス鉱物性燃料数量指数(右軸)石炭(図1)輸入金額の要因分解(2010=100)-30-20-1001020302011201220132014201520162017(前年差*)*2010年の値を100とした時の前年からの変化量を表す。(出所)財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」より作成。Δ輸入数量Δ輸入価格Δ為替(図2)鉱物性燃料輸入金額の要因分解-60-40-200204060802011201220132014201520162017Δ輸入数量Δ輸入価格Δ為替(2010=100)*2010年の値を100とした時の前年からの変化量を表す。(前年差*)(出所)財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」より作成。(図4)輸出金額の要因分解(前年差*)-30-20-1001020302011201220132014201520162017(2010=100)*2010年の値を100とした時の前年からの変化量を表す。(出所)財務省「貿易統計」、日本銀行「企業物価指数」より作成。Δ輸出数量Δ輸出価格Δ為替(図5)海外現地生産比率の推移1012141618202224製造業海外現地生産比率(%)201620152014201320122011201020092008200720062005200420032002200120001999(出所)内閣府「平成28年度企業行動に関する案件結果」(図6)海外現地法人売上高(製造業)と輸出金額0510152025303519981999200020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017海外現地法人売上高(製造業)名目輸出(年度)(兆円)(注)各値は四半期ベース(出所)経済産業省「海外現地法人四半期調査」、「財務省「貿易統計」20 ファイナンス 2018 Jun.

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る