ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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その一つとして、日立造船株式会社らとの共同出資により新設したグローバル測位サービス株式会社では、高精度測位補正技術(MADOCA)*23を用いた実証実験等を通じて、センチメートル級のグローバル精密衛星測位サービスの事業化を目指している(図表10)。本件は、自動車、農機及び建機の自動運転、海洋及び気象観測等のグローバル展開を支える基盤技術の確立を目的としており、今後、新設会社が中核となって、幅広く関係省庁や関連企業と協力しながら、事業化を進めていく。(残る2件の取組については、「投資事例の紹介3、4」にて詳述)(3)民間金融機関等との共同ファンド民間金融機関等による成長資金の更なる供給を確保するため、メガバンクや地方銀行等の民間金融機関、又は民間事業者との間で共同ファンドを組成している。ア.地方銀行との共同ファンド政投銀は、地域金融機関等の成長資金供給主体において、事業性評価等の目利きが出来る人材の育成を目的に、積極的なノウハウの提供等に努めることとしており、その一環として、地方銀行との間で複数の共同ファンドを組成している*24(図表11)。前述のせとうち観光活性化ファンドもその一つであり、DMOにおける観光振興に係る戦略策定、マーケティング、商品企画及びプロモーション等を支援するとともに、ファンドからの資本性資金等の供給により、地域の観光関連事業者の取組を総合的に支援するプラットフォームの形成に貢献している。*23) JAXAが開発を進める精密衛星軌道・クロック推定技術によるソフトウェア。Multi-GNSS Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis.*24) 2018年3月末時点で計7ファンド、組成総額208億円(特定投資業務の対象となるものに限る)。イ.民間事業者との共同ファンド金融機関のみならず、民間事業者からの成長資金の供給を促進すべく、民間事業者との間でも共同ファンドを組成している。株式会社星野リゾート・グループとの共同ファンド(星野リゾート旅館・ホテル運営サポート2号投資事業有限責任組合)は、地域の旅館やホテルにおける経営課題の解決や、インバウンド需要を通じた成長を目的に、同グループが有する施設運営ノウハウや人材育成手腕を活用した魅力ある施設造りにより、地域観光産業の活性化及び観光交流人口の増大を図る取組である(図表12)。本件においては、同グループの経営資源を核に民間金融機関の参画も実現しており、適切なリスクシェアが果たされている。図表12  星野リゾート・グループによる 地方宿泊事業者向け成長支援ファンドH&Dパートナーズ(GP)星野リゾート旅館・ホテル運営サポート2号投資事業有限責任組合投資先企業LP出資LP出資LP出資LP出資増資GP出資GP出資LP出資LP出資投融資投融資投資先企業投資先企業投融資投融資投融資投融資施設オペレーションブランディング星野リゾート三井住友銀行みずほ銀行三菱UFJ銀行政投銀マーケティングその他金融機関ファイナンス産業調査図表11 地方銀行との共同ファンドファンドからの個別案件実績:11件◆地場製造事業者の設備投資や、地域における観光資源を活かした新たな取組等を対象に、メザニンやエクイティを供給◆ファンドからの資金供給とは別途、地元金融機関からシニア・ローンが供与される場合も有り投資事業有限責任組合(ファンド)〈LP〉地方銀行〈LP〉政投銀(営業部店)〈GP〉DBJ地域投資(株)(※)LP出資LP出資GP出資ソーシング事業者事業者事業者管理業務政投銀(本店)出資人員・・・事業者リスクマネー供給リスクマネー供給投資委員●金融ノウハウ●人材育成(※)GPについては、地方銀行子会社や、地方銀行子会社と政投銀子会社による共同GPとなる場合も有り図表10 日立造船等による精密衛星測位サービスの事業化【新設会社】グローバル測位サービス(株)センチメートル級の精密衛星測位サービスの事業化に向けた実証実験等日立造船政投銀出資関係省庁自動車・農機・建機・受信機メーカー連携連携デンソー出資日本無線出資日立オートモティブシステムズ出資出資 ファイナンス 2018 Jun.17政策金融の意義と取組 2日本政策投資銀行の特定投資業務の取組について ~リスクマネー供給の強化に向けて~特集

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