ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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して、宇宙分野の取組を強化している。国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)との間で、2016年3月に航空分野で、2017年5月には宇宙分野で、それぞれ連携に関する協定を締結している。ア.航空新興国を中心とする世界的な航空機需要の拡大に伴い、民間航空機機体やエンジン部品の量産体制構築が必要になっている。特定投資業務では、国内航空機関連事業者が参画する、民間航空機の機体やエンジンに係る国際共同開発や量産拡大の取組に対して、リスクマネーの供給を行っている(図表9)。イ.宇宙宇宙分野においては、これまでの官需主導による開発型産業から、IoTの進展を背景とした量産型産業への転換が進んでいる。このため、宇宙利用産業における衛星データの利活用促進に向けた環境整備、小型衛星の爆発的増加や打上げインフラ拡充を支える宇宙機器産業の国際競争力強化、大学発ベンチャーなど多種多様な新規参入者の増加などの新たな動きが見られる。これらを加速、推進させるために、宇宙分野でのリスクマネー供給に取り組んでおり、2017年度末までに3件の特定投資実績を有する。図表9 航空関連案件機械・機械部品メーカー航空機部品製造事業リスクマネー(投資)政投銀●完成機メーカー●航空機エンジンメーカー対価分担生産品の納入ユーザー新規航空機・エンジン開発事業への参画納入(販売)対価対価国際共同生産リターン小型ロケットによる商業宇宙輸送サービスの事業化に向けて新世代小型ロケット開発企画株式会社 取締役 阿部耕三弊社は、世界的な拡大が見込まれる小型衛星の打上げ需要に対応するため、小型ロケットによる商業宇宙輸送サービスの事業化を目指す企画会社です。技術の進歩によって人工衛星が小型化し、2013年頃から打上げ数が上昇しています。しかし、小型の人工衛星を、従来の大型ロケットに乗せて打ち上げる場合、大型の人工衛星の隙間に小型の人工衛星を搭載するミッションとなるので、打上げのタイミングや目指す軌道は、大型の人工衛星の都合に左右されることが多くなります。ところが、小型衛星を運用している事業者としては、好きなタイミングで理想的な軌道に打上げをしたいというニーズが高いのです。弊社の設立に参加したのは、キャノン電子株式会社(出資比率70%)、株式会社IHIエアロスペース(同10%)、清水建設株式会社(同10%)、政投銀(同10%)の4社。キャノン電子は、民生機器の量産やコスト削減のノウハウを提供、IHIエアロスペースは、ロケット開発のノウハウを提供します。清水建設は、宇宙開発のコンサルティングやインフラ整備の知見の提供を行い、政投銀は、ファイナンスの面からサポートを行います。4社が有する異なる知見を共有することで、具体的な事業化を進めています。ロケットの打上げ事業は、地域活性化にも貢献します。ロケットの発射場には、関係者のほか、観光客も集まることが期待できます。例えば、フランスに本社を置くロケット打ち上げ会社のアリアンスペースは、発射場の周辺に高級ホテルやカジノなどを設置して、顧客の満足度の向上に努めています。今後、建設場所が決まった段階で、地元の方々と相談をしながら、地域と一体となって開発を進めて行きたいと考えています。宇宙航空研究開発機構(JAXA)によるロケット打ち上げ。写真提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)小型衛星(1~200㎏)の打ち上げ数の推移050100150200250300350(基)2005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2013年2014年2015年2016年2017年2017年の打ち上げ数は324基となり、10年前の約12倍に達した。2012年(出典)金岡充晃(CSP Japan, Inc.) 投資事例の紹介316 ファイナンス 2018 Jun.

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