ファイナンス 2018年6月号 Vol.54 No.3
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援にも取り組んでいる。海外展開支援にあたっては、資金面の支援のみならず、買収後の継続的な経営支援を行っている。株式会社中電工(本社:広島県広島市)による、シンガポール所在の電気工事事業者の買収案件では、中電工初の海外企業買収であったため、政投銀は、ファイナンス・スキームの検討、デューデリジェンス及び契約調整等の案件組成プロセスを支援するとともに、被買収企業への非常勤取締役の派遣等を通じて、モニ*20) 航空機工業振興法(昭和33年法律第150号)に基づく指定金融機関としての制度融資。*21) 人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(平成28年法律第76号)*22) 衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(平成28年法律第77号)タリング等の支援を行っている(図表8)。(2)企業競争力強化日本企業の競争力強化を支援するため、新設会社の共同設立による一部事業の切り出しや、海外大型買収案件での共同投資に取り組んでいる。産業別では、政投銀の第4次中期経営計画(2017~2019)でも注力分野の一つに掲げる、航空・宇宙分野での取組が活発であり、特定投資業務において、地域企業の事例を含めて計11件415億円に及ぶ。政投銀は、旧・日本開発銀行時代から、日本初の航空機エンジン国際共同開発プロジェクト向け長期融資を行う*20など、約30年に亘り、航空産業分野を支援する中で、豊富な知見やネットワークを蓄積してきている。また、2016年の宇宙関連二法案(宇宙活動法*21、衛星リモセン法*22)の成立を受けて、2017年4月に「航空宇宙室」を発足させ、航空分野での知見を活か瀬戸内ブランドの確立による地方創生を目指して株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション 代表取締役社長 佐々本博士せとうちDMOは、行政を主体とし、瀬戸内観光の需要創出に取り組む一般社団法人せとうち観光推進機構と、地域金融機関を主体とし、観光事業者の事業開発支援に取り組む株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション(以下、SBC)で構成され、行政と民間のハイブリッドなスクラムで運営しています。この枠組みは日本で初めてのもので、両社は密に連携し、瀬戸内の観光資源を最大限活用しながら、地域の人々が主体となって行う観光地域づくりを推進しています。SBCの主な活動の一つが、せとうちDMOメンバーズ事業です。同事業は、瀬戸内地域を訪れる観光客を狙い、新商品・サービスの開発や販路拡大に取り組む企業等に対し、個々では備えが難しい様々な機能を提供する会員制度です。具体的には、メンバーに対し、外国人観光客向けの多言語電話通訳サービス、国内外向けに地域産品や着地型旅行商品販売を行うECサイトによる販路開拓支援、せとうちDMOが運営する「瀬戸内Finder」を活用した情報発信支援などを行っております。より多くの事業者の皆様にご利用頂けるよう、サービスの機能拡充に努めています。また、「せとうち観光活性化ファンド」による金融支援も、SBCが行う特徴的な活動です。同ファンドは、瀬戸内地域を事業基盤とする観光関連事業者に対して、資本性資金を中心とした資金支援を行うことを目的としています。最初の案件として、(株)せとうちクルーズが行うクルーズ船の新造投資について資金支援を行い、2017年秋より、同社はこのクルーズ船ガンツウ(guntû)を活用して、ハイエンドな宿泊型瀬戸内クルージングを開始しております。その後も、サイクリングの聖地であるしまなみ海道における自転車が搭載可能なサイクルシップの導入((株)瀬戸内チャーター)や、山間部の観光資源開発のための登山・アウトドアユーザー向けアプリの開発((株)ヤマップ)など、順調に投融資を進めています。政投銀には、企画段階から、観光という新しい産業に関して、海外の先進的な事例を提供して頂いた他、地域金融機関等、関係者間の調整にもご尽力頂きました。投資に関する豊富なノウハウに期待し、「せとうち観光活性化ファンド」の運営もサポートして頂いております。今後も、長期的な視点で地域発展に取り組むパートナーとして、せとうちDMOと協働して頂ければと考えています。投資事例の紹介2本州と四国を結ぶ瀬戸大橋。瀬戸内海の美しい風景を際立たせている(日本政策投資銀行行員撮影)株式会社せとうちクルーズが運航する「guntû(ガンツウ)」Photo-Tetsuya Ito 写真提供:(株)せとうちクルーズ図表8  中電工によるシンガポール企業買収を通じた 海外展開を支援中電工優先株出資普通株出資株式取得株式取得対価政投銀取締役派遣によるガバナンス(買収SPC)CHUDENKO ASIA【シンガポール企業】RYB Engineering海外市場開拓における事業基盤・ネットワーク獲得 等⇒ グローバルでの競争力強化案件検討/モニタリング支援 ファイナンス 2018 Jun.15政策金融の意義と取組 2日本政策投資銀行の特定投資業務の取組について ~リスクマネー供給の強化に向けて~特集

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