ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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第3回の意見交換会においては、政府系金融機関の現状や、民間金融機関との連携・協調及び競合の状況、制度融資(金利体系等)の在り方、実効的な対話の枠組み等について幅広く意見交換が行われた。制度融資の在り方については、民間金融機関の意見も踏まえ、必要に応じて制度要求に反映できるよう、次回の意見交換会は制度要求を控える夏ごろの開催に向けて調整することとされた。加えて、政府系金融機関と民間金融機関とが、本部や現場レベル等の各層において、積極的な連携や意見交換を行うことが重要であるとの認識が改めて共有された。日本政策金融公庫、商工組合中央金庫及び沖縄振興開発金融公庫では、現場レベル(支店)でのコミュニケーションの充実を図る目的で、2015年3月以降、これらの政府系金融機関と地銀(地銀協会員行)との間に、「連絡窓口」が設置されている(図表8)。日本政策投資銀行では、2015年5月の日本政策投資銀行法の改正を受け、民間金融機関との協調を徹底するため、外部の有識者による助言機関として設置していた「アドバイザリー・ボード」を取締役会の諮問機関へと変更し、適正な競争関係の確保を諮問事項と*6) 全銀協、地銀協、第二地銀協と15回実施(2018年3月時点)*7) 民間による成長資金の供給の促進を図るため、国からの一部出資を活用し、企業の競争力強化や地域活性化の観点から、成長資金の供給を時限的・集中的に実施することを企図して、日本政策投資銀行に設けられたもの。詳細については次号で紹介する。*8) 特定投資業務に関して、法令に基づき、政策目的に沿って行われていること、民業の補完・奨励および適正な競争関係が確保されていること等について客観的な評価・監視等を実施するための体制整備として、取締役会の諮問機関として設置。*9) 2017年は13回、2018年は8回実施(2018年3月時点)。して追加した。あわせて、民間金融機関との定期的な意見交換会を実施するとともに*6、民間金融機関との意見交換の結果をアドバイザリー・ボード、特定投資業務*7モニタリング・ボード*8に報告し、適正な競争関係確保の状況等について評価をさせた上で、結果を業務運営に反映させるという仕組みを構築している(図表9)。また、民間金融機関の積極的な農業融資の取組をより一層支援するため、各財務(支)局において、農林水産省と連携しながら、日本政策金融公庫における農業融資や経営支援に関するノウハウ等を民間金融機関と共有するための農業融資に関するセミナーを開催している*9。地方創生などの喫緊の課題の解決に対し、政府系金融機関は、民間金融機関と連携・協調しつつ、地域を支える事業者に対する資金供給やそれと一体となった様々な支援を行っていくことで、地域経済の好循環を実現し、日本経済の継続的な成長に貢献することを目指している。〈参考文献〉● 田部真史(2010)「政策金融について(総論)」『ファイナンス』2010年7月号図表8  民間金融機関との連携・協調のための 「連絡窓口」の設置支 店地 銀本 部(連絡窓口)支 店(連絡窓口)日本政策金融公庫商工組合中央金庫沖縄振興開発金融公庫本 部(1)本部に報告(2)窓口を通じて連絡(3)現場レベルでの意見交換図表9  日本政策投資銀行における民間金融機関との協調の徹底 *2018年4月末時点事業計画・事業報告書等へ反映民間金融機関等との定期的な意見交換都銀懇、地銀懇、第二地銀懇の枠組みを活用した意見交換会(それぞれ年2回程度を想定)特定投資業務モニタリング・ボード■特定投資業務の適正な実施を評価■年2回程度を想定(敬称略)奥正之 SMFG名誉顧問髙木伸 全銀協前副会長中西勝則 静岡銀行代表取締役会長山内孝 マツダ相談役横尾敬介 経済同友会副代表幹事・専務理事渡文明 JXHD名誉顧問アドバイザリー・ボード■業務全般の適正な競争関係確保の状況等を評価■年2回程度を想定(敬称略)秋池玲子 ボストン・コンサルティング・グループ シニア・パートナー・アンド・ マネージング・ディレクター奥正之 SMFG名誉顧問釡和明 IHI相談役中西勝則 静岡銀行代表取締役会長根津嘉澄 東武鉄道代表取締役社長三村明夫 新日鐵住金相談役名誉会長植田和男 共立女子大学国際学部教授 ファイナンス 2018 May5政策金融の意義と取組特集

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