ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
7/71

2011年度から2016年度にかけて、民間金融機関及び日本政策金融公庫の貸出金残高は、各々499兆円から561兆円へ(12.3%増)、21兆円から18兆円へ(▲15.5%減)と推移した(図表3、4)。政府系金融機関全体の貸出金残高については、53兆円から3兆円増加し、56兆円となったが、貸出金残高全体に占める割合は9%まで低下した。政策金融の果たす重要な役割の一つが、経済環境の大きな変化や大規模な災害などの危機時におけるセーフティネット機能である。日本政策金融公庫では、経営環境変化対応資金などのセーフティネット貸付や災害により被害を受けた事業者のための災害復旧貸付の融資制度を通じて、その機能を果たしている(図表5)。また、内外の金融秩序の混乱や大規模な災害等によって影響を受けている事業者の資金繰りを支援する*3) 現在、指定金融機関として、商工組合中央金庫と日本政策投資銀行が法律上みなし指定されている。ため、主務大臣の認定を受けた危機事象において、指定金融機関*3が日本政策金融公庫からの信用供与を受け、事業者に対する必要な資金の貸付け等を行う危機対応業務を実施することとしている。政府系金融機関と民間金融機関の貸出の伸び率を比較すると、バブル崩壊やアジア通貨危機、リーマンショックなど景気の後退期において、民間金融機関に比べて、政府系金融機関の貸出が伸びており、大きな役割を果たしてきたことが分かる(図表6)。図表4  政府系金融機関と民間金融機関の貸出金残高(推移)2121201832353738372192242282312352372372802862933033133243249.7%9.7%9.9%9.9%10.0%10.0%9.8%9.8%9.2%9.2%9.0%9.0%8.4%8.6%8.8%9.0%9.2%9.4%9.6%9.8%10.0%10.2%01002003004005006007002011年度2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度(兆円)日本政策金融公庫政府系金融機関(日本政策金融公庫除く)都銀等地域金融機関政府系金融機関の割合【右軸】535658585556553(499)566(510)579(521)591(534)603(548)(561)3838616211818(注1)都銀等は、全国の銀行から地銀、第二地銀を除いたもの。地域金融機関は、地銀、第二地銀、信金、信組。政府系金融機関は、日本政策金融公庫、国際協力銀行、沖縄振興開発金融公庫、日本政策投資銀行、商工組合中央金庫。(注2)国際協力銀行は、2012年4月に設立されたが、2011年度末の計数についても、国際協力銀行業務は日本政策金融公庫から除き、その他の政府系金融機関に計上している。(注3)日本政策金融公庫は、危機対応等円滑化業務を含むことから、指定金融機関である日本政策投資銀行及び商工組合中央金庫との間で当該業務について重複がある。(注4)( )は、都銀等と地域金融機関の貸出金残高それぞれについて四捨五入したものの合計。(出所)各機関HP、全国銀行協会、全国地方銀行協会、全国第二地方銀行協会、信金中金 地域・中小企業研究所、全国信用組合連合会図表3  日本政策金融公庫と民間金融機関の貸出金残高の伸び率(対2011年度比)▲0.4%▲3.1%▲7.8%▲13.9%▲15.5%+2.0%+4.4%+6.9%+9.6%+12.3%080901001101202011年度2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度日本政策金融公庫民間の合計(%)図表5 日本政策金融公庫によるセーフティネット関連融資の実績の推移21,217 21,217 51,288 51,288 43,119 43,119 35,813 35,813 33,415 33,415 28,345 28,345 24,542 24,542 24,536 24,536 22,05922,059158,383 276,894 250,772 219,807 195,837 171,195 152,043 151,257 150,2620100,000200,000300,000010,00020,00030,00040,00060,0002016年度2015年度2014年度2013年度2012年度2011年度2010年度2009年度2008年度金額件数2016年熊本地震に関する特別相談窓口(2016年4月)(億円)(件)リーマンショック(2008年9月)円高等対策特別相談窓口(2010年9月)東日本大震災に関する特別相談窓口(2011年3月)50,000(注)「セーフティネット関連融資」とは災害復旧貸付、東日本大震災復興特別貸付、2016年熊本地震特別貸付、経営環境変化対応資金、金融環境変化対応資金、農林漁業セーフティネット資金等が含まれます。図表6  政府系金融機関と民間金融機関の貸出の伸び率-15.0%-10.0%-5.0%0.0%5.0%10.0%15.0%858687888990919293949596979899000102030405060708091011121314151617政府系金融機関銀行等(年)バブル崩壊アジア通貨危機リーマンショック(前年比)(出所)日本銀行「資金循環統計」(注1)1998年以前は、68SNAに準拠。1999年~2004年は93SNAに準拠。2005年以降は、08SNAに準拠。1999年以降は、住宅ローンを含む。2005年以降は、公的専属機関を除く。(注2)2005年は統計改定に伴い、旧公営企業金融公庫が除かれること等による統計の断絶が生じているため点線で表示。 ファイナンス 2018 May3政策金融の意義と取組特集

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る