ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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くの川があり、かつて利根川が流れていた市街中央部は地下水が豊富です。特に広瀬川は市の繁華街を流れており、市民の憩いの場として古くから親しまれています。自然豊かな「水のまち」は、萩原朔太郎(代表作:「月に吠える」、「青猫」等)など多くの詩人を生み出しました。このため、前橋は「近代詩のふるさと」とも言われています。広瀬川の畔には、「前橋文学館」があり、これらの詩人たちの資料を数多く展示しています。特に萩原朔太郎に関係する展示物は、原稿など全国一の質と量を有しています。河畔沿道には、他にも「萩原朔太郎記念館」や多くの詩碑が建立されており、格好の文学散歩コースとなっています。5「花燃ゆ」ゆかりの地 前橋前橋市は、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」に登場した大沢たかおさん演じる「楫か取とり素もと彦ひこ」にゆかりの深い地です。楫取素彦は、吉田松陰の盟友にして、主人公「杉文」の2番目の夫となった人物であり、群馬県の初代県令(知事)としてその能力を遺憾なく発揮し、群馬の産業・教育の振興に尽力した人物です。また、100年以上前、利根川のほとりに建てられた迎賓館「臨りん江こう閣かく」は、楫取素彦が寄付を呼びかけ建造されたものであり、本館に掲げられた扁額の書は、この楫取素彦のものと言われています。「臨江閣」は明治天皇、大正天皇などの多くの皇族方が滞在された歴史を持つほか、昨年11月には、第30期竜王戦七番勝負第3局が開催されるなど、まさに前橋の歴史と文化を象徴する建物です。臨江閣6生糸のまちからTONTONのまちへ赤城山麓の農村地帯では、江戸時代から養蚕製糸業が盛んであり、幕末の開国以降においては外国への生糸輸出により、さらに生糸生産が急増し、前橋は「生糸のまち」として大いに繁栄しました。製糸業の繁栄により、市内にはハイカラな西洋料理店が数多く軒を並べていたそうです。カツライスやポークカレーは当時の人々にはお洒落で贅沢な料理であり、その名残か、今でも豚肉料理をメニューとするお店がたくさんあります。また、雄大な自然に囲まれた赤城山麓では養豚が特に盛んであり、前橋市の豚肉産出額は全国でもトップクラスとなっています。近年、前橋市では「TONTONのまち前橋」をキャッチフレーズに、毎年、市内の飲食店が参加する「T-1グランプリ」を開催しています。「とんかつ」「ソースカツ丼」といった豚肉料理の王道はもちろんのこと、うどんにトンカツがのった「とんかつうどん」や「とんぷら(豚肉のてんぷら)」などメニューは豊富です。前橋市にお越しの際は是非ご賞味ください。7おわりに残念ながら群馬県は、2017年の都道府県の魅力度ランキングで全国41位となっています。映画やドラマにもなった漫画「お前はまだグンマを知らない」などにより、一部では認知度が高まりましたが、まだまだ全国に発信できる魅力がたくさんあります。特に群馬県の中核都市である前橋市は、今回ご紹介した観光地のほか、温泉や花スポットなど一年を通して楽しめるエリアです。焼きまんじゅう(群馬県民のソウルフード)をお供に、前橋の自然と歴史と文化を味わってみてはいかがでしょうか。【写真提供:群馬県(許諾第29-02108号)、(公財)前橋観光コンベンション協会、ようこそまえばしを進める会】60 ファイナンス 2018 May連 載 ■ 各地の話題

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