ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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の労働力率(FLFPR)と、1990年代後半の両立支援度、雇用の柔軟性、そしてこれら2つの合計である総合指標との相関係数が示されています。この表から、1990年代後半の政策・制度環境と1980年のTFRとの相関は全てマイナスであるのに対し、2002年のTFRとの相関は全てプラスであることがわかります。また、仕事と家庭の両立支援度と25~34歳の女性の労働力率との間には強いプラスの相関がみられます。ここから、1980年代初めに出産・子育て期の女性の労働力率が高かった国では、その後仕事と家庭の両立のための政策的支援の拡充に力を入れ、それにより出産・子育て期の女性(カップル)をとりまく政策・制度環境が改善されたことがわかります。その結果、2000年代に入ると出生率の高い国ほど、出産・子育て期の女性の就業率も高いという状況が出現したのです。つまり、増加する女性就業に対応するために仕事と家庭の両立をめぐる政策・制度環境の改善に力を入れた結果、女性の仕事と家庭の両立が可能になるような社会環境が整えられたことが示唆されます。10.おわりにわが国の少子化はいつまで続くのでしょうか。2010年代に入って出生率は低水準で底を打ち、TFRは約1.4の水準で推移しています。したがって、それまでのように超少子化に歯止めがかからないという状況からは脱しつつあるのかもしれませんが、出生率はまだ非常に低い水準です。さらに、夫婦の出生力にも近年低下の兆しがみられます。そして、この超少子化の最大の直接要因は25~34歳という出産のピーク年齢の女性(そして男性)の結婚の減少です。では出生率を回復させ超少子化にピリオドを打つためにはどうするべきなのでしょうか。まずひとつは、結婚をより魅力的にすること、つまり、男性の家事・育児参加を増やすことにより家庭内ジェンダー環境をより平等にすることです。もう一つは、仕事と出産・育児の両立のためのより効果的な政策的支援です。保育サービスや育児休業制度などの家族政策による直接的支援に加え、雇用を柔軟にすること、つまり労働市場をよりファミリー・フレンドリーにすることも重要かつ効果的であると言えます。表11  OECD加盟18ヵ国における仕事と家庭の両立支援政策・制度と出生率(TFR)および25~34歳の女性の労働力率との相関1990年代後半の両立支援度雇用柔軟性総合指標80年のTFR-0.24-0.32-0.4502年のTFR0.300.390.5480年のFLFPR0.77-0.020.5002年のFLFPR0.69-0.0030.4758 ファイナンス 2018 Mayシリーズ 日本経済を考える 77連 載 ■ 日本経済を考える

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