ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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た男女差がみられないことは注目に値します。さらに、2000年代に入り景気が回復すると、4年制大学卒という高学歴者の就職率は男性よりもむしろ女性の方が高くなっています。このように、高学歴者の就職率における男女格差はほぼ解消され、近年はむしろ女性の方が高くなっているのですが、非正規雇用を含めた就業行動全般はどのように変化しているのかを、次にみてみたいと思います。図5には、15~49歳の人口再生産年齢にある女性の年齢別労働力率の推移が示されています。年齢別労働力率はその年齢の人口における就業者と完全失業者を合計した割合であり、言い換えれば、実際に就業している者および職に就くことを希望して職を探している者の合計の人口に占める比率を示しています。この図から、1970年には20~24歳および35歳以上の女性の率と比べて大きく落ち込んでいた25~34歳の女性の労働力率は1970年代半ば以降大きく上昇し、特に2000年代半ば以降、25~29歳の女性の労働力率が20~24歳の女性の率よりも高くなっていることがわかります。これは、結婚・出産により一時的に仕事をやめる傾向が強かったわが国の女性の就業の増加と長期化を示唆しています。このように、結婚と出産のピーク年齢である20歳代後半から30歳代前半の女性を中心として、35歳以上の女性でも就業率は上昇していますが、少子化とその最大の直接要因である未婚化との関係を考えると、単に就業しているか否かだけではなく、どのような働き方をしているのかが重要になります。そこで、女性就職者に占める雇用者の割合の推移をみてみたいと思います。雇用者(英語のemployee)とは、雇われて働く人のことであり、その多くは家庭外で賃金を得て働いている人です。図6に示されているように、1970年代以降、人口再生産年齢の女性就業者に占める雇用者の割合は大きく増加しており、急激な女性の雇用労働力化が進んでいることがわかります。そしてこれが結婚・家庭と仕事の両立を難しくする一因となっているのではないでしょうか。さらに、結婚をめぐる価値観もより非伝統的な方向に変わってきており、伝統的に結婚は特に女性にとって社会的かつ経済的な必然であったものが、個人の選択の対象となり、そのコストとベネフィットを考えるようになってきています。その結果、結婚をためらう女性(そして男性)が増えてきていることも未婚化の要因のひとつであると考えられます。6.結婚している女性の出生力次に、出生力変化のもうひとつの直接要因である結婚している女性(つまり夫婦)の出生力の変化をみてみたいと思います。先に述べたように、わが国の少子化の最大の直接要因は出産ピーク年齢の女性(そして男性)の結婚の減少ですが、結婚している女性の出生力にも近年低下傾向がみられます。表3には、50歳未満の有配偶女性(妻)の結婚持続期間別の平均子供数の推移が示されています。ここから、まだ結婚して間もない結婚5年未満の妻を除き、平均子供数は1990年代以降明らかな減少傾向を示していることがわかります。次に、これらの妻の平均予定子供数をみると(表4)、結婚15~19年が経過した(そのほとんどは子ど図5 女性の年齢別労働力率の推移:1970-2015年010203040506070809015-1920-2425-2930-3435-3940-4445-491970197519801985199019952000200520102015図6 女性就業者に占める年齢別雇用者割合の推移:1970-2010年010203040506070809010015-1920-2425-2930-3435-3940-4445-4919701975198019851990199520002005201054 ファイナンス 2018 May連 載 ■ 日本経済を考える

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