ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
57/71

よそ6倍に、そして40歳代前半の男性では約4%から約29%とじつに7倍以上に激増しています。さらに、2015年の50歳の男性の未婚者割合(生涯未婚率)は約23%とおよそ4人に1人という高い水準になっており、これは今後さらに増えることが予想されます。わが国では、他のアジアの国々と同じように、出生のほとんどが結婚の中で起こっている、つまり結婚していない女性が子どもを生むことが非常に少ない(全出生の約2%にとどまっている)ため、急増する生涯未婚者の多くはパートナーがいないと考えられます。このことは今後、家庭・家族を持たない中高年者が急増するであろうことを示唆しています。一方、わが国の公的年金制度や国民健康保険および介護保険制度などの社会保障制度は、国民が結婚して家族や子どもを持つことを前提に構築されており、この生涯未婚率の急増は今後急速に増加することが予想される未婚の高齢者を国家が支えていく覚悟を決める必要があるということを示唆しています。5.女性の未婚化の社会経済的要因女性の未婚化の最大の社会経済的要因のひとつは高学歴化です。図3には、男女別の各学校水準別進学率の推移が示されています。ここから、1970年から1975年にかけて、高校を卒業した女性の短大・大学への進学率が大きく増加していることがわかります。急速な未婚化の開始のほぼ5年前である1970年頃から、女性の高等教育機関への進学率が大きく上昇し始めたことは注目に値します。特に、女性の4年制大学への進学率は1980年代半ば以降増加が加速しており、この時期にわが国の女性の高学歴化が本格化したことがわかります。1990年代から2000年代にかけて男性の大学進学率も増加していますが、女性に比べてそのスピードや緩やかです。その結果、1980年代末以降、短大と大学を合計した高等教育機関への進学率の男女差はほぼ解消されており、これは多くの欧米先進諸国でもみられる現象です。4年制大学への進学率にしぼると、2010年代でも女性の率はまだ男性の率よりも低いのですが,男女差は急速に縮まっています。次に、このような女性の高学歴化は学校卒業後の就業行動にどのように反映されたのかを検討するために、学校卒業後の就職率の変化をみてみたいと思います。図4には、学校卒業後1年以内に正規の職に就いた人の割合である就職率の推移が男女別に示されています。ここではまず、4年制大学卒業者の就職率の男女差に注目してください。1960年代~1970年代にかけて、大卒者の就職率には大きな男女差があったことがわかります。しかし、未婚化(少子化)の始まった1970年代半ば以降、急速にこの男女格差は縮小し、1990年には男女ともに81%となって、高学歴者の就職率における男女格差は解消されました。その後、1990年代に入ると就職率は男女ともに大きく下がっています。この1990年代はバブル経済の崩壊とそれに続く不況による人件費削減圧力および経済のグローバル化による国際競争力維持のため、戦後長年にわたってわが国の雇用慣行であった終身雇用制が揺らぎ始め、非正規雇用が若者を中心に増加した時期です。しかし、この時期でも新規大卒者の就職率には目立っ図3 男女別進学率の推移:1950-2015年010203040506070809010019501955196019651970197519801985199019952000200520102015高校 男高校 女短大 男短大 女大学 男大学 女図4 学歴からみた男女別就職率の推移:1950-2015年010203040506070809010019501955196019651970197519801985199019952000200520102015女子高卒女子短大卒女子大卒男子高卒男子短大卒男子大卒 ファイナンス 2018 May53シリーズ 日本経済を考える 77連 載 ■ 日本経済を考える

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る