ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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も30歳代前半の女性の方が出生率は高くなりました。これがいわゆる晩産化です。そして、出産の開始が遅れたため、それを取り戻そうと早いテンポで子どもを生んでいく「キャッチアップ現象」が起きています。しかし、この30歳代の女性の出生率の増加分では20歳代の出生率の減少分をカバーできないため、超少子化が起こっているのです。3.出生率低下の直接要因わが国のように婚外出生がほとんどない社会では、出生率は女性の年齢別有配偶率(すなわち女性の結婚の年齢パターン)と結婚している女性(夫婦)の出生率(すなわち有配偶出生率)の2つの直接要因によって決定されます。TFRの変化をこれら2つの要因に分解すると、1950年~1975年(出生率と出生の年齢パターンは1960年と1975でほぼ同じなので1975年を1960年としてもよい)のTFRの減少は、女性の結婚の年齢パターンに由来するのがおよそ1割、有配偶出生率に由来するのがおよそ9割で、結婚している女性の出生率の低下が主な要因となっています。一方、1970年代半ば以降のTFRの人口置換水準以下への継続的低下(つまり少子化)は、ほぼ全てが女性の結婚の年齢パターンの変化、すなわち未婚化によるものです。さらに、女性のコホートTFRと出生順位別出生力を用いた要因分解を行った既存研究によると、1990年以降のTFRが1.5かそれ以下という超低水準への出生力低下のおよそ3割が夫婦の出生力の低下によるもので、残りの約7割が結婚の減少によるものであるという推計結果が示されています。したがって、近年のわが国の超少子化は未婚化だけでなく、結婚している女性(夫婦)の出生率の低下にも影響されていると言えます。4.結婚の年齢パターンの変化では、1970年代半ば以降のTFRの置換水準以下への継続的落ち込み、つまり少子化の最大の直接要因である未婚化についてみてみたいと思います。表1には、女性の年齢別未婚者割合の推移が示されています。少子化が始まった1975年と現時点(2015年)の数値を比べますと、20歳代後半の女性の未婚者割合は約21%から約61%に、30歳代前半では約8%から約34%に、そして30歳代後半では約5%から約23%へと急激に増えています。つまり、25~39歳という出産ピーク年齢の日本女性の急速な未婚化が進行しています。また50歳時の未婚者割合により測られる生涯未婚率は、同時期に約4%から約13%と大きく増加していることがわかります。ここから、わが国の女性は、1975年以前はほぼ皆婚状態であったものが、2015年には50歳の女性の約8人に1人が未婚となっており、伝統的な皆婚パターンからの乖離が進んでいることが示唆されます。次に、男性の年齢別未婚者割合の推移をみますと(表2)、女性よりもさらに急激に未婚化が進んでいることがわかります。1975年から2015年に、未婚者割合は30歳代前半の男性で約14%から約47%と3倍強に、30歳代後半の男性では約6%から約35%とお表1 女性の年齢別未婚者割合の推移:1950-2015年年次15-1920-2425-2930-3435-3940-4445-4950195096.655.315.25.73.02.01.51.4195598.366.520.67.93.92.31.71.5196098.668.321.69.45.53.22.11.9196598.568.118.29.16.84.73.02.5197097.871.618.17.25.85.34.03.3197598.669.220.97.75.35.04.94.3198099.077.724.09.15.54.44.44.5198598.981.430.610.46.64.94.34.3199098.285.040.213.97.55.84.64.3199598.986.448.019.710.06.75.65.1200099.187.954.026.613.88.66.35.8200599.188.759.032.018.412.18.27.3201099.489.660.334.523.117.412.610.6201599.590.961.033.723.319.115.313.3表2 男性の年齢別未婚者割合の推移:1950-2015年年次15-1920-2425-2930-3435-3940-4445-4950195099.582.934.58.03.21.91.51.5195599.990.240.79.23.01.71.21.2196099.891.646.19.93.62.01.41.3196599.690.345.711.14.22.41.71.5197099.390.046.511.74.72.81.91.7197599.588.048.314.36.13.72.52.1198099.691.555.121.58.54.73.12.6198599.492.160.428.114.27.44.73.9199098.592.264.432.619.011.76.75.6199599.292.666.937.322.616.411.28.9200099.592.969.342.925.718.414.612.6200599.693.471.447.130.022.017.116.0201099.794.071.847.335.628.622.520.1201599.794.872.546.534.529.325.222.852 ファイナンス 2018 May連 載 ■ 日本経済を考える

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