ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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企業収益と設備投資・次に、設備投資の動向を見ると、7年連続で増加、リーマンショック前の水準を超えている(図表7)。投資スタンスについても、大企業・製造業で、「生産(販売)能力の拡大」と回答した企業の割合が「維持更新」を上回り、最も高くなるなど、企業の投資姿勢に改善の兆しが見られる(図表8)。・ただし、設備投資はキャッシュフローの範囲内にとどまっている(図表9)。図表7 GDP上の設備投資の推移607080901995200005101516(兆円)(年度)図表8 設備投資スタンスのウェイトの 推移(大企業・製造業)(%)31.233.036.18.98.87.810.59.96.731.131.031.117.917.017.90102030405020101517(年度)(※)各年度7-9月期の調査結果。維持更新省力化合理化生産(販売)能力の拡大製(商)品・サービスの質的向上その他図表9 設備投資/キャッシュフロー 比率の推移20304050607080901001995200005101516(%)(年度)(※1)設備投資はソフトウェアを除いた数値。(※2)キャッシュフロー=経常利益÷2+減価償却費今後の展望・業績等に比して設備投資が伸びていない背景として、企業の期待成長率の低さも一因として指摘されている。内閣府のアンケート調査によると、日本の今後5年間の期待成長率は2017年度は前年比でわずかに上昇したが、依然として低い(図表10)。・期待成長率が低い背景には、人口減少による国内市場の縮小といった需要サイドの要因に加え、人手不足による供給能力の逼迫などもあると考えられる(図表11)。足元では、非製造業を中心に資本装備率が低い水準で推移している(図表12)。資本装備率を高めて、供給能力を改善できれば、需要サイドの取り組みと相まって、ひいては期待成長率を高めることにもつながると考えられる。今後国内経済を持続的に成長させていくため、資本装備率改善に向けた企業の一層積極的な設備投資行動にも期待したい。図表10 期待成長率(今後5年間の見通し)012319952000051015我が国の実質経済成長率業界需要の実質成長率(年度)(%)17(※)上場企業図表11 人手不足の現状▲4004001219952000051015有効求人倍率雇用人員判断DI(右軸、軸反転)(倍)(「過剰」-「不足」、%pt)(※)有効求人倍率は、四半期の季節調整値。図表12 従業員一人当たりの資本装備率46819952000051015製造業非製造業(年度)(百万円)16(※1)資本装備率=有形固定資産(建設仮勘定、土地を除く)(期首・期末平均)÷従業員数(※2)非製造業は、電気業、ガス・熱供給・水道業を除く。(出典)財務省「法人企業統計調査」、「法人企業景気予測調査」、財務省「国際収支」、日本銀行「短観」、内閣府「国民経済計算」、「企業行動に関するアンケート調査」、厚生労働省「一般職業紹介状況」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2018 May43コラム 経済トレンド 47連 載 ■ 経済トレンド

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