ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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コラム 経済トレンド47大臣官房総合政策課 福島 宏祐/佐藤 麻紀子企業収益の拡大と企業行動について本稿では、近年の企業収益が拡大している現状の分析及びそれを受けた設備投資等の企業行動について考察した。企業収益の動向・日本企業の業績は好調が続いており、2016年度の経常利益は過去最高を更新した(図表1)。・増益の要因を見ると、営業利益の伸長に加え、営業外損益(営業外収益-営業外費用)が利益を大きく押し上げている(図表2)。近年の活発なM&Aや対外直接投資等を背景に、リターンで得られる配当金等が増加しており、これも営業外損益の貢献を高めていると考えられる(図表3)。図表1 経常利益の推移501001502002503001995200005101516売上高売上高営業利益営業利益経常利益経常利益(1995年度=100)(年度)(※)全規模・全産業(除く金融保険業)。以降、記載がない場合は同規模・同産業を示している。図表2 経常利益の寄与度分解▲500501001502001995200005101516営業利益営業外損益(1995年度対比、%)(年度)図表3 「投資その他の資産」と 対外直接投資の推移01002003001502503504501996200005101516投資その他の資産対外直接投資資産残高(右軸)(兆円)(年度)(兆円)(※1)法人企業統計の項目である「投資その他の資産」は投資有価証券、投資不動産、長期貸付金等の合計であり、その中には対外直接投資資産も含まれる。(※2)対外直接投資資産残高は12月末時点の残高。居住者が非居住者に対して有する金融資産。企業行動についての考察・利益率について、経営指標として重視されるROEで見ると、リーマンショック後改善傾向にあることが分かる(図表4)。要因分解すると、売上高純利益率が大きく上昇していることがROEを押し上げている一方で、財務レバレッジ(総資産/純資産)は低下傾向が続いており、ROEの押し下げ要因となっている(図表5)。財務レバレッジの低下は、自己資本比率の上昇を意味し、企業が財務基盤の強化を引き続き重視していることが示唆される。・他方、税引き後利益の上昇にあわせ、株主への支払配当金も近年増加傾向にあり、コーポレートガバナンス改革等を背景に、企業が株主還元を積極化している姿も窺われる(図表6)。図表4 ROE(純利益/純資産)の推移▲20246819952000051015(%)(年度)16(※1)ROE=純利益÷純資産(期首・期末平均)(※2)純資産については、2007年度以降は、新株予約権を除く。図表5 ROEの要因分解▲2024619952000051015売上高純利益率(%)回転率(回)財務レバレッジ(倍)(年度)16(※1)回転率=売上高÷総資産(※2)財務レバレッジ=総資産÷純資産(総資産、純資産は共に期首・期末平均)図表6 支払配当金の推移(年度)(1995年度=100)16▲200020040060080019952000051015配当金人件費ソフトウェアを除く設備投資当期純利益本稿は、法人企業統計調査の単体決算ベースの分析である。42 ファイナンス 2018 May連 載 ■ 経済トレンド

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