ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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第六回 広域で日本を盛り上げる(2)ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?4月号で紹介した上越新幹線「とき」と羽越線特急「いなほ」の新潟駅同一ホーム乗り換え、開始初日4月15日(日)の始発で体験しました。新幹線の両方のドアが時間差で開き、後から開くドアから出ると目の前に秋田行きの「いなほ」の姿が。思った以上に感動しました。それにしても、乗客を上回るんじゃないかと思うほどカメラを持つ人だかりができていました(いわゆる「鉄ちゃん」ですね)。鉄道って言葉にできない魅力があるんだあと改めて思いました。日本海美ガストロノミー食旅に向けた挑戦さて、その「とき」「いなほ」に加え、北陸新幹線も通っている新潟県・庄内エリアのブランドを磨く取り組みを紹介します。江戸時代中期から明治中期までの主要な流通網である北前船。大坂方面と蝦夷地を結ぶ航路で、日本海の各地が寄港地として隆盛を誇りました。新潟が開港五港だったことからもおわかり頂けると思います。しかしながら、その後物流網が鉄道や車に変わり、経済的には相対的に日本海側の地位が低下しました。これをプラス面にとらえれば、日本海側には本来の日本文化、食文化がより残り続けているとも言えます。こうした食文化都市・地域であることを世界にアピールすべく、食というワンテーマに絞り、「食を通じて地域を知ること」、すなわち「食べる」だけにとどまらず、それを育んだ風土や歴史、そこでの暮らし・文化も体験する、それを地域に根付いたブランドとする、という取り組みです。美味しいのはもちろん、その土地に内包された歴史や文化を尊重し、表現し、昇華させた料理を意味するガストロノミー(美食学)。「日本海美食旅」と書いて「日本海ガストロノミー」と読むキャッチフレーズをこの取り組みに用いることにしました。個人的には、「新潟」という名前にせずに、Japanという説明不要の用語があり、また他県にも広がりを持たせられる「日本海」というネーミングが気に入っています。地域が昔から育んできたものを見つめ直し、地元の人々、その地域が好きで集まってきた人々、専門家が協力しながら市場に受け入れられるような価値に整える。人口が減少していくなかで、一人ひとりがふるさとに誇りを持ちながら、様々な国の旅行者と交流することで地域経営が成り立っていく。成熟社会のひとつのモデルにできればと思っています。日本海美食旅ホームページhttps://www.niigata-kankou.or.jp/2019dc/index.html雪国の古民家をリノベーションした宿で、雪国ガストロノミーを味わうこうしたローカルガストロノミーは、試行錯誤ながら具体的な動きになっています。今年の1月に発表された全国観光圏観光滞在プラン総選挙では、ニセコなど全国13の観光圏のうち、新潟県を中心に群馬県、長野県の一部地域で構成する「雪国観光圏」が1位に新潟県総務管理部長(元財務省広報室長)佐久間 寛道40 ファイナンス 2018 May連 載 ■ ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

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