ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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が世に出た際の、消滅可能性都市の議論の中では、名寄市は同時期に大学や病院、商業施設の規模拡大等があったために、道北では数少ない非消滅可能性自治体、人口減少が比較的緩やかなまちとして注目されました*10。一方で、引き続き人口減少は進んでおり、子育て世帯への支援や人口減少下におけるコンパクトなまちづくりなどに取り組んでいくこととしておりますが、既に各分野での人員不足が顕在化し、対策に追われている現状です。また、市内外からこの地に住みたい、住み続けたいと思われるよう、他地域横並びでない、このまちならではの魅力を高めていくことも、必要となります。そのため、名寄市の地方創生総合戦略や総合計画においては、地域の自然や財産を活かした、この地ならではの取組を推進していくこととしています。2 冬季スポーツによる地方創生地方創生の取組として特徴的なものとして、降雪・着雪の早い本市の気候や、北海道内には札幌と名寄にしかないスキー連盟公認のノーマルヒルジャンプ台、道立公園内のカーリング場などの施設を活かし、冬季スポーツの大会・合宿誘致やジュニア選手の育成、スポーツを通じた健康づくりなどに取り組んでいます*11。冬季五輪メダリストなどの専門スタッフを迎え、先述の市立大学(栄養学科)や市立病院と連携した、食に関する講習や医科学検査などのジュニアアスリート支援の取組を進めることで、国内外からの合宿者数の増加や、冬季スポーツのために名寄へ進学する学生*10) 平成30年3月公表の最新の社人研地域別推計ではこれら特殊要因が剥落し、厳しい結果となりました。*11) 大通りや公園などで、両手にポールを持って歩く(ノルディックウォーキング)人々の姿が見られますが、中には高齢者とは思えないスピードで歩く方もいて、驚かされます。*12) 先述の山形県鶴岡市と姉妹都市であるほか、東京都杉並区とも交流があり、6月上旬には区役所前でアスパラの販売会も行われます。が出るなどの成果も表れてきています。本年は平昌冬季五輪で冬季スポーツが注目を浴びたところであり、今後、ますますの盛り上がりが期待されるところです。極寒豪雪の地で生活していくことは大変なことではありますが、あえて地域の強みとしても捉え、前向きに取り組んでいくところに、地方の底力を見ることができるとも言えるのではないでしょうか。3 おわりに北海道は全国的にも早いスピードで人口が減少する中で、札幌への一極集中が進む、地方創生の課題先進地です。今回の派遣を通じ、改めて課題の難しさを感じる一方で、各地方が持つ魅力や潜在力の高さを知ることもできました。2年間の派遣任期も残すところわずかとなりました。名寄市の地方創生はまだまだ始まったばかりですが、周辺自治体や友好自治体と連携しながら、今後も前向きに取り組まれていくことと思います*12。本年は明治150年、北海道命名150年の節目の年でもあります。これに先立ち、北海道は有名な「試される大地」に代わる新しいキャッチフレーズを「その先の、道へ。北海道」(英訳版:Hokkaido. Expanding Horizons.)としました。試練を超えたその先を目指すこの地域を、引き続き、究めていきたいと思います。商店街でのローラースキーレース道立公園内のカーリング場(11月~3月)34 ファイナンス 2018 May地方創生の現場から【第1回】

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