ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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況はそれほど悪化していません。表2のとおり、美浜町の高齢化比率は、和歌山県や全国と比べて高く、産業構造は、就業者ベース・生産額ベースとも、第1次産業および第3次産業の比率が高くなっています。第3次産業が多いのは、サラリーマンが多いためです。美浜町は「何もないまち」と言われており、駅もなく、国道もなく、企業もなく、信号が3つしかありません。美浜町の課題は、人口減少、少子高齢化、独居老人の増加、南海トラフ発生時の津波想定(町の半分が浸水)、目立った産業がないこと(最大の産業はサラリーマン)、最大の観光資源である日ノ岬・アメリカ村の疲弊などです。2 美浜町役場の取組みの紹介美浜町役場に着任して2か月後に、若手職員中心のプロジェクトチームを結成しました。美浜創生総合戦略(平成27年11月作成)に掲げられた項目のうち、優先度が高いものについて議論し、Project A,B,Cを抽出しました。ア.Project A:煙樹海岸活性化プロジェクトa.事業背景煙樹ヶ浜海岸の雄大な自然は、京阪神各地からの人々を惹き付ける魅力を持っていますが、お金を落とす仕組みがないうえに、美浜町の地元産品を販売する場所がありません。b.事業目的訪れてくれた人々に楽しんでもらい、地元産品を買ってもらう場所作りを行って、地元産品のブランド化を図ります。c.事業概要平成27年度から取り組んでいる6次産業化事業の終着点として、平成28年11月から、町営キャンプ場管理棟を活用したアンテナショップを開設しました。地域住民が地元産品や手作りのインテリアなどを提供、平成29年度からは、手数料1割を徴収しています。イ. Project B:ふれあいと健康と起業のまち「みはま」プロジェクトa.事業背景美浜町では、核家族化(61.4%)が全国平均(56.3%)より進んでおり、特に高齢独居(14.5%)が全国平均(9.2%)より大きく進んでいます。美浜町はコンパクトなまちですが、あらゆる世代の住民が憩える場所がありません。b.事業目的市街地の中心部にあるが、余り利用されていない吉原運動公園の隣接地(保安林)2haをリニューアルして、子供から高齢者まで幅広く憩える場を整えます。また、起業に寄与するため、松葉堆肥のブランド化、地元産品の販売などを行います。心の豊かさを満喫できるまちとして、町外から子育て世代を呼び込みます。キャンプ場管理棟をアンテナショップに改造行列ができたオープン初日表2 人口・産業の比較(美浜町、和歌山県、全国)美浜町和歌山県全国年齢構成年少人口比率11.0%12.1%12.6%生産年齢人口比率55.6%57.0%57.0%高齢者人口比率33.4%30.9%26.6%就業者別産業構成第1次産業比率7.1%9.0%4.0%第2次産業比率20.8%22.3%25.0%第3次産業比率72.1%68.7%71.0%生産額別産業構成農業算出額比率4.5%1.9%1.1%製造品出荷額比率47.7%60.9%38.5%商品販売額比率47.8%37.1%60.4%(出所)就業者別産業比率は平成27年国勢調査。農業算出額は生産農業所得統計(平成26年)。但し、美浜町は平成27年。製造品出荷額は工業統計調査―経済センサス活動調査(平成26年)。商品販売額は商業統計調査―経済センサス活動調査(平成25年)。 ファイナンス 2018 May29地方創生の現場から【第1回】

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