ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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「地方創生人材支援制度」は、地方創生に積極的に取り組む自治体(原則人口5万人以下)に対し、国家公務員や大学研究者、民間人材を、市町村長の補佐役として自治体に派遣する制度です*1。本連載では、平成28年度から平成29年度に財務省から各地に派遣された7名から、現地の概況や地方創生の取組について紹介します。*1) まち・ひと・しごと創生本部地方創生人材支援制度HP https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/about/jinzai-shien/index.html地方創生の現場から【第1回】和歌山県美浜町の未来づくり元和歌山県美浜町役場 地方創生統括官 西山 巨章1 和歌山県美浜町の概要「美浜町」という名前のまちは全国に4町(和歌山県、福井県、愛知県、三重県御浜町)ありますが、和歌山県美浜町は、和歌山県のほぼ中央部、日高川右岸から海岸線に沿って展開する町で、北は日高町、東は御坊市に接し、南は太平洋に、西は徳島県を臨む瀬戸内海の南の入口です。万葉集で、「風早の 三穂の浦みを 漕ぐ舟の 舟人さわく 浪たつらしも」と詠われているように、美浜町は古代から開けていました。徳川頼宣が初代紀州藩主として入国以来、三尾浦、和田浦、入山村、吉原浦、田井村、浜の瀬浦として統治されました。明治22年、町村制施行とともに、三尾村、和田村、松原村となりました。その後、昭和29年10月、3村が合併して美浜町が誕生しました。「美浜町」の町名は、公募により名付けられました。美浜町には、日ノ岬、煙樹ヶ浜海岸、全長4.5kmを誇る近畿最大の松林(幅最大500m)といった自然資源や、アメリカ村、万葉の歌碑などの歴史資源、地引き網漁といった産業資源が豊富にありますが、観光収入には結び付いていません。表1のとおり、美浜町は、和歌山県内で太地町に次いで面積が小さく、人口密度は高いですが、人口は7,400人程度と少なく、将来的には3,700人まで減少するとされています。南海トラフ発生時の津波想定は最大津波高18mで、町内の半数近くが浸水するとされています。財政力指数は0.30と低水準ですが、ハコモノ行政を余り行って来なかったことから、財政状日ノ岬から見たアメリカ村煙樹ヶ浜の夕日地引網漁表1 美浜町の概要面積12.77km2(東西約9km、南北約2.5km)人口7,421人(平成30年2月末現在)南海トラフ発生時の浸水想定津波浸水面積割合45.3%、最大津波高18m財政力指数0.30実質公債費比率6.8%(元利償還額/標準財政規模)将来負担比率42.4%(将来負担すべき実質的な負債/標準財政規模)(出所)人口は平成27年国勢調査。浸水想定は内閣府「南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ」(平成25年3月)。財政内容は美浜町役場資料(平成27年度決算)。28 ファイナンス 2018 May

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