ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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デルへと移行していることがわかった。イノベーションを生み出す要素である「価値の創出」のさらなる取り組みに加え、イノベーションを市場価値に転換する「価値の収益化」が重要である。この2つが両輪となって循環し、拡大していくことが生産性の向上につながる。企業が「価値の収益化」をこれまで以上に達成することができれば、その恩恵は当該企業だけでなく、雇用の増加等を通じて社会全体に広がる。日本企業の成長は、高齢化や人口減少、財政問題と課題が多い日本の成長に直結する。イノベーションを生産性向上に結びつけるために、「価値の収益化」の達成にこれまで以上に取り組み、「価値の創出」と「価値の収益化」をつなぎ合わせていくことが重要である。そのためには、企業の経営者がこれまで以上に「価値の収益化」に深くコミットしていくことが求められる。■終わりに以上、研究会の概要を紹介した。本研究会の大橋座長が執筆した「はじめに」では、「本研究会で得られた知見を一言でまとめるとすれば、機械学習やビッグデータといったイノベーションを果敢に取り込みながら、付加価値の創出とその収益化との間の循環(プロセス)を回復する取組みが求められるということだろう」と総括している。本研究会のこれらの研究成果が普及されることで、日本企業においてイノベーションを通じた生産性の向上につながることを期待したい。研究会の報告書は、財務総研のHPに全文が掲載されており、上記で紹介した報告のほか、今回紹介できなかった講演録なども含まれている。また、報告書内容を把握しやすいよう各章を一覧できるスライドもHPに掲載している。是非、一読いただきたい。〈報告書アクセス先〉HP: http://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2017/inv2017.htmHPキーワード検索: 「財務総研、イノベーション、生産性向上、研究会」図8 イノベーションを通じた生産性向上のフレームワークイノベーションを生み出す要素イノベーションを市場価値に転換する方策価値の創出(Value Creation)価値の収益化(Value Capture)生産性の改善(1)R&Dの拡大・質の向上(2)人材育成・企業組織の変革(3)国際的な連携による情報の交流の活性化(4)起業の促進(1)新しい需要の創出(2)価値に見合う値付け(3)海外も含めた競争者との差別化顧客のニーズに関する情報を捉え、新しい技術を活用しながら収益に結びつける(注)本フレームワークは本研究会で提示された論点を踏まえて、まとめている。(出所)奥・橋本(2018)本報告書の内容や意見はすべて執筆者個人の見解であり、財務省あるいは財務総合政策研究所の公式見解を示すものではありません。 ファイナンス 2018 May23

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