ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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7奥愛・橋本逸人(財務総合政策研究所) ― 「価値の創造」と「価値の収益化」の循環が重要で、日本企業は「価値の収益化」をより目指す必要日本では人手不足感の強まりもあり、生産性の向上に取り組んでいる企業が多い。しかし、労働投入量(インプット)の効率化だけに着目し、企業が提供するモノやサービスに見合う付加価値(アウトプット)の引上げを通じた労働生産性の向上という観点が足りない。収益の増加によって付加価値の引上げを図る場合、消費者の満足度を高めながら価値に見合う収益を上げる必要がある。その鍵となるのがイノベーションである。日本企業はイノベーションを実現するため多額のR&D投資を行ってきたが、米国、ドイツの企業と比べて収益性等に結びついていないとの指摘がある。日本企業はイノベーションの創出とその収益化が分断している可能性がある。日本企業のイノベーションを創出する取組みを収益に結びつけていくことは、日本企業のイノベーションを促進させ、生産性向上を達成するためにも重要な課題となる。企業のイノベーション活動が収益に十分結びついていない点を捉え、イノベーションを2つの要因に分けて分析した先行研究を踏まえて、「価値の創出(Value Creation)」と「価値の収益化(Value Capture)」との言葉を用いたフレームワークを提示する(図8)。「価値の創出」は新しい価値を創造する活動であり、「価値の収益化」は創り出したモノやサービスの価値を収益化する活動とする。日本企業は「価値の創出」に注力しているが、「価値の収益化」の観点が十分ではないと考えられる。「価値の収益化」に取り組んでいる企業の事例を分析したところ、顧客のニーズに関する情報を捉え、新しい技術を活用しながら収益に結びつけるビジネスモ図7 ハイブリッド人事のイメージ【従来のイメージ(総合職コース)】「就社型の人材管理」(年収)(年齢)企業内人材育成の仕組み役職定年継続雇用インターン【今後のイメージ(プロフェッショナルコース)】企業横断的な人材育成や労働移動の仕組み職業人としての基盤能力形成プロフェッショナルあるいはマネージャーとしての能力発揮「就社型の人材管理」「プロ型の人材管理」(年収)(年齢)企業内人材育成の仕組みプロフェッショナルな能力確立副業・兼業の許容インディペンデントコントラクターとして独立も(出所)山田(2018)図6 人材タイプ・マトリックス無し ←→ 有り高 ↑↓ 低(強い ←→ 弱い)一企業での雇用保障職務限定技能・賃金レベル欧米型正社員正社員(プロ型)正社員(限定型)非正社員正社員(日本型)無し ←→ 有り高 ↑↓ 低(強い ←→ 弱い)一企業での雇用保障職務限定技能・賃金レベル正社員(限定型)非正社員正社員(日本型)(出所)山田(2018)22 ファイナンス 2018 May

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