ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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在する企業は努力をしても生産性を上げることは難しい。企業のみならず、政府としてもやるべきことをやらなければ、マクロの生産性向上は望めない。3滝澤美帆委員 ― 経済全体の生産性向上の鍵は付加 価値の増加少子高齢化の進展に伴い、日本経済は労働力に関する強い供給制約に直面している。生産性の向上は官民の最重要課題である。これまでの生産性の改善策は、その多くが生産性の分母(インプット=労働)を節約することに注力しており、こうした効率化も引き続き重要だが、今後は生産性の分子(アウトプット=付加価値)の向上を強力に図る必要がある。日本の労働生産性水準は米国と比べ低い水準にある。特にサービス産業を含む第三次産業が低く、サービスの質を考慮しても、米国との格差は依然存在する(図2)。換言すれば、日本において生産性を向上させる余地が未だ大いに存在しており、生産性の改善をドライバーとした経済規模の拡大が可能であることを意味している。日本国内における生産性の変動を産業別に観察すると一定のパターンが確認される(図3)。例えば、インプットを減らしアウトプットを増加させた“Ecient”パターンの例として電気産業(日本単体)がある。また、インプットの増加以上にアウトプットを増加させた“Aggressive”パターンの例として自動車産業を含む輸送機械産業がある。一方で、アウトプットの減少以上にインプットを減少させた“Passive”パターンの例は、特にサービス産業で多く見られる。生産性のパターンは産業毎に多様であるが、アウトプットをいかに増加させていくかが今後の経済全体の図2 サービスの質を調整後の労働生産性水準質を調整後の労働生産性質を調整前の労働生産性(滝澤2016)118.075.3114.174.053.952.640.638.505010002040横軸:付加価値シェア(%)(米国の生産性水準=100)121.771.393.867.249.543.041.537.533.342.8卸売・小売情報通信その他個人サービス運輸縦軸:労働生産性水準(米国=100)飲食・宿泊医療・福祉教育物品賃貸・事業サービス金融(出所)滝澤(2018)図3 生産性の向上パターン(1)アウトプットインプット(2)(3)(4)(5)生産性向上のパターン(1)~(5)AggressiveEcientPassive(出所)滝澤(2018) ファイナンス 2018 May19

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