ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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要な特性」を欠いていると指摘される一方、「暗号資産の基礎となる技術を含む技術革新が、金融システムの効率性と包摂性及びより広く経済を改善する可能性を有している」という認識が共有された。木原副大臣からは、中でも国際的協調が特に必要なマネロン・テロ資金供与対策に関し、2015年のFATFガイダンスの内容を拘束力のあるFATF基準に格上げすることを期待するとともに、仮想通貨交換業についての法制度が未整備の国は現行のFATFガイダンスに則り速やかに法整備を進めることが必要である、と発言した。その結果、コミュニケでは、「暗号資産に提供される形でのFATF基準の実施にコミットし、FATFによるこれらの基準の見直しに期待し、FATFに対し世界的な実施の推進を要請」することが確認された。5国際課税国際課税のセッションでは、木原副大臣がリードスピーカーを務め、電子経済の課税上の対応につき、各国がバラバラに対応することを避け、国際的な合意に基づく長期的解決策によって対応することが重要であり、来年の日本議長下でも積極的に取り上げたい旨、発言した。また、暫定的措置の導入に当たってはOECDの中間報告書に盛り込まれた考慮すべき事項との整合性を確保すべきこと、税の透明性の向上についてもG20が協力して取り組む必要がある旨、主張した。会議においては、「経済の電子化が国際課税システムにもたらす影響を分析したOECD中間報告書」が歓迎され、「2019年に進捗状況の報告を、2020年までに合意に基づいた解決策を追求すべく共に取り組むことにコミット」することが確認された。そのほか、「税源浸食と利益移転(BEPS)パッケージの実施に引き続きコミット」することが示されるとともに、「各法域による国際的に合意された税の透明性基準の順守状況を評価するための基準の更なる強化の在り方」について、OECDの提言に期待が示された。6テロ資金供与対策テロ資金供与対策に関しては、木原副大臣から、北朝鮮の脅威に対して金融制裁を含めた国連安保理決議の履行をはじめとするあらゆる手段を講じていく必要がある旨、発言した。会議においては、「テロ資金供与、マネーロンダリング及び大量破壊兵器拡散資金供与との我々の闘いの強化にコミット」することが確認された。【出張者小話】2018年G20の議長国を務めるアルゼンチンは、会議運営において様々な仕掛けを用いており、非常に興味深かった。例えば、各国代表の手元にはスイッチが設置されており、会議冒頭で「現下の世界経済における最大のリスクは何か」という質問に対するクイックサーベイを行い、その場で結果を議長国が発表するという取組を行っていた。結果はやはり、保護主義への対応が最大の関心を集めており、各国の立場からすると論争を呼びかねない議題でも、こうしたアンケートで可視化して見せつけられると、ぐうの音も出ない。見事な運営に思える。また、各国代表の発言時間を3分に制限し、発言中はモニター上に経過時間が表示されていた。参加国の多いG20の会合では、1カ国でも長く発言してしまうと時間切れを起こしやすくなり、不完全燃焼になりかねない(しかも、1国の大臣の発言なので、途中で話を遮るのは至難の業になる)。これもいい工夫だったと言える。しかしながら、日本を代表して参加した木原副大臣の発言の段になると、同時通訳の音声が流れないトラブルがあり、控えていた我々代表団の皆が肝を冷やす場面もあった。日本が2019年に議長国となる際にはこれを他山の石とし、万全の会議運営を行いたいという思いを強くした出張であった。共同会見写真16 ファイナンス 2018 May

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