ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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対話や行動の必要性」が認識された。木原副大臣からは、保護主義的な措置による内向き政策はどの国の利益にもならず、自由で公正な貿易を通じて世界経済の成長を高めていくことが重要である旨の発言を行った。2仕事の未来本年のアルゼンチン議長下では、優先分野の一つとして、技術革新が経済や雇用に与える影響を取り上げており、これを「仕事の未来(Future of Work)」と呼んでいる。今回の会議では、「デジタル化を含むテクノロジーは、その国境がなく、形を持たないという性質や、認知的作業を自動化する能力の高まりにより、世界経済を根本的に作り変えつつある」という点が指摘され、「すべての人々が恩恵を享受できるよう、国際協調を含む政策対応が必要である」ことが確認されるとともに、政策の選択肢のメニューにつき、7月のG20会合において検討することとなった。3インフラアルゼンチン議長下でのもう一つの優先分野として、インフラストラクチャー投資の推進が挙げられている。今会議では、「インフラは、生産性を向上させ、連結性を強化し、長期の包摂的な成長を維持し、市民に新しい経済への物理的・電子的なアクセスを確保するために、重要」であるにも関わらず、「インフラ整備の資金ギャップが依然として存在している」点が指摘され、「更なる民間資金の動員」の必要性が認識された。そして、「インフラを投資のアセットクラスとして発展させるための必要条件を整備する」ことが合意され、「インフラを投資対象とするためのロードマップ」が支持された。この「ロードマップ」は、インフラをアセットクラスとしていくために必要な措置を取りまとめたもので、規制の枠組みや資本市場、質の高いインフラを含む7つのワーク・ストリームが特定されている。木原副大臣からは、アルゼンチンの掲げる、インフラをアセットクラスとしていくコンセプトについて、低金利の環境下で投資先を模索する投資家と、途上国における巨額のインフラ資金需要とを結びつけるものであること、そして、2016年9月の杭州サミットで*1) FSBにより、法定通貨であるとの誤解を避けるため、暗号及び分散型台帳等で構成される民間金融資産全体を指し「暗号資産」の用語を用いるよう整理された。も合意された通り、インフラプロジェクトの質の高さが重要であること等を発言した。4国際金融アーキテクチャIMFの資金基盤に関し、木原副大臣から、引き続きIMF理事会にて検討が進められるべきであり、加盟国からの自発的資金貢献をクォータ改革に反映させることが重要である旨、発言した。会議においては、「強固で、クォータを基礎とし、かつ、十分な資金基盤を有するIMFを中心としたグローバル金融セーフティーネットの更なる強化へのコミットメント」が再確認された。資本フローの監視及び資本フローに伴うリスクの管理に関する取組は、日本がG20等においてその強化の重要性を主張してきた。今回の会議においては、「引き続き、資本フローを監視し、国際通貨システムの強靭性を向上させるための手段についての理解を精緻化する」ことが認識された。このため、「システミックリスクを限定するマクロプルーデンス政策の重要性を認識」するとともに、資本フロー管理措置への理解を深めることとされた。また、「IMFの『機関としての見解』に基づいた、IMFによる更なる取組み」や、OECD資本自由化コードの見直しへの期待が示された。低所得国の債務問題に関しては、木原副大臣より、低所得国での公的債務が積み上がっていることは大きな懸念であり、債務の透明性の向上に向けて国際社会が協調して取り組んでいく必要がある旨、発言した。会議においては、「債権者と債務者の両サイドにおいてより高い透明性を求める」ことが確認された。4金融セクター金融セクター改革に関しては、「金融危機後の規制改革の主要な要素の完了となるバーゼルⅢの最終化」が歓迎され、「完全、適時かつ整合的な規制改革の実施及び最終化と、実質的な意図せざるいかなる結果も特定・対処し、規制改革がその目的を達成することを確保するための評価を行うことに、引き続きコミット」することが確認された。注目された仮想通貨に関しては、会議では「暗号資産*1」と定義された上で、それが「ソブリン通貨の主 ファイナンス 2018 May15

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