ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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国際局国際機構課長 三好 敏之/課長補佐 瀧村 晴人/企画係長 松浦 晃弘2018年3月19日~20日にかけて、アルゼンチン・ブエノスアイレスにて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下「G20」)が開催され、日本からは木原副大臣と黒田日本銀行総裁が出席した。2日間にわたり、世界経済、インフラ、国際金融アーキテクチャ、金融セクター改革、国際課税、テロ資金供与対策など多岐にわたり議論が行われた。今回のG20は、アルゼンチン議長下で初めての財務大臣・中央銀行総裁会議であり、また、各国における直近の動向から貿易や仮想通貨に関する議論への世間の注目も高かったが、その中で、日本としても積極的に議論に貢献し、マクロ経済政策や為替について、G20のこれまでのコミットメントを再確認することができた点が大きな成果である。本稿では、主な議論の概要を紹介したい。参考1)参加国・国際機関(ア)G20:G7(日本、カナダ、仏、独、伊、英、米、EU)、アルゼンチン、豪、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、露、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ(イ)招待国:チリ、オランダ、シンガポール、スペイン、スイス(ウ)国際機関:金融安定理事会(FSB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、国際決済銀行(BIS)、世界銀行(WB)、金融活動作業部会(FATF)1世界経済今回のG20は、世界経済が引き続き堅調に推移する一方、2月には各国の株価が一時大きく下落するなど金融市場における変動が高まった中で開催された。木原副大臣からは、直近の金融市場の大きな変動は世界経済のファンダメンタルズを反映したものではないとの認識を示したうえで、現在の世界経済の主なリスクは、主要国の金融政策の正常化に伴う資本フローの変化、地政学的リスクをはじめとする非伝統的リスク、保護主義等の内向き政策、の三つである旨指摘し、世界経済の安定を図るため、これまでのG20において合意されたコミットメントを改めて確認する必要があると主張した。その中でも、非伝統的リスクについては、北朝鮮の脅威に対して国際社会が一致して断固たる行動をとっていくべきであり、北朝鮮との過去の対話が非核化につながっていない教訓を踏まえて対応すべきことや、国連安保理決議の完全な履行をはじめとしたあらゆる手段を講じていく必要がある旨、発言した。議論の結果、会議後発出されたコミュニケ(共同声明)において、前回のG20サミット(昨年7月独・ハンブルク)に続き、マクロ経済政策に関しては、金融・財政・構造政策の「全ての政策手段を用いる」こと、為替に関しては、「為替レートの過度な変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与えうる」ことが確認された。また、貿易に関しては、米政権の保護主義的な関税措置を受け、どのような合意がなされるかに注目が集まっていたところ、「ハンブルク・サミットでの貿易に関する首脳の合意を再確認」するとともに、「更なるG20ブエノスアイレスの概要(2018年3月19日~20日開催、於:アルゼンチン・ブエノスアイレス)集合写真14 ファイナンス 2018 May

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