ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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プについては主に北陸銀行が行っている。このように、両者はお互いの得意分野を基に相互補完関係を構築している。ア-2 名古屋銀行(愛知県)当行は日本公庫と連携し、創業を本格的に考えている者を対象に『創業café』を開催している。『創業café』では、日本公庫を始めとした支援機関による講義の後、参加者と支援機関を交えた交流会を開催し、創業者が相談しやすい環境づくりを行っている。実際、これまでの23組の参加者のうち15組が起業し、うち10組の資金調達に対応している。ア-3 西中国信用金庫(山口県)当金庫及び日本公庫の近隣店舗同士で、『創業応援交流セミナー』(内容は、ア.中小企業診断士等からの基調講演、イ.先輩起業家による体験談及び参加者交流会、ウ.当金庫及び日本公庫による個別相談会、の3部構成)を共催している。交流会には、当金庫及び日本公庫職員が参加しており、創業者同士のネットワーク構築にとどまらず、当金庫と日本公庫職員間においても相談しやすい関係が構築され、新規融資に繋がることが期待できる。イ  創業支援ツールや事業計画策定支援に ついて日本公庫のアドバイスアとも関連するが、日本公庫は創業支援を行うに際して、創業者支援に資する多くのツールを有している。創業時に必要な知識や手続きを解説した『創業の手引』がその一つである。これは単なる事業計画書策定の指南書というだけでなく、創業前に必要な営業許可や税務・社会保険関係の届け出の手ほどきを整理したもので、創業準備において参考になるものである。イ-1  池田泉州銀行(大阪府)・西日本シティ銀行(福岡県)日本公庫の『創業の手引』を参考にしながら、『創業応援ガイドブック』等を作成しており、これを活用しつつ、創業者の事業計画書の作成を支援している。特に、西日本シティ銀行はその冊子において、創業支援体制・ツールを盛り込むとともに、福岡県内の創業支援スポットの紹介なども行っている。また、創業支援の頁の冒頭には、日本公庫を始め関係機関と創業支援に関し、「連携サポート」する旨を明記している。イ-2 みちのく銀行(青森県)2015年3月に日本公庫と『業務連携・協力に関する覚書』を締結し、それに基づいた各種セミナー・勉強会の開催や個別の協調融資案件での関わり等から交流が深まり、日本公庫側から様々なアドバイスを受けたことによって、協調融資商品である『みちのく創業チャレンジ資金』の創設に至った。ウ  日本公庫から地域金融機関への優良顧客(創業者)等の紹介日本公庫では決済口座を持てない関係上創業者にメイン行を作ってもらう場合や、日本公庫だけでは創業者の希望額全額の融資ができない場合等に、地域金融機関は創業者の紹介を受けることがある。その場合、日本公庫の融資審査を通った事業者であるということで、信頼して審査ができるという側面も存在する。ウ-1 大阪信用金庫(大阪府)大阪信用金庫は、日本公庫及びフューチャーベンチャーキャピタル株式会社(投資事業組合の運営会社)とともに、『だいしん創業支援ファンド~この街のホームドクター~』を運営している。小規模事業者に対し出資という形で支援する目的であるが、当金庫は日本公庫からの投資先の紹介に期待している。ウ-2 大分県信用組合(大分県)日本公庫との協調融資の促進に主眼を置いた意見交換会を年2回開催している等の関係で、互いに案件を相談しやすい関係を築いている。それを基礎に、創業者のニーズを斟酌したうえで、創業者が事業用の決済口座を持っていない場合は、日本公庫から当組合を紹介され、融資に関する要件が合致すれば協調融資も行っていることもあって、当組合に決済口座を持つ新たな取引先が増加している。ウ-3 埼玉縣信用金庫(埼玉県)各支援機関と当金庫を基軸とするワンストップの創業支援スキームが特徴的であるところ、日本公庫との間でも、創業案件に関しこまめな情報共有を行っており、相互に顧客を紹介し合って、協力しながら地域経済の活性化を図っている。エ  リスク分散による、顧客の希望に沿った 融資条件(金利引下げ、無担保等)の設定創業者への融資について、信用リスクの観点から融資限度額が低く抑えられている傾向にある。また十分な担保を提供できる創業者は珍しく、結果として、創業者は意欲と能力があったとしても、資金調達面で躓くことを懸念して、創業を躊躇する可能性がある。この点、日本公庫との協調融資により、信用リスクを分 ファイナンス 2018 May11政策金融の意義と取組特集

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