ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2
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この他、その後の、あるいは他分野での連携に繋がるといったメリットも挙げられた(図表6)。地域金融機関の中には、積極的に連携を始めたばかりの機関も多いことから、今後、連携の成果が具現化し、創業後の資金調達や他分野の協調融資実績等に表れることが期待される。では次に、上記の5点のメリットについて、具体的な事例を交えつつ、紹介する。3.事例紹介ア  創業者の発掘 (創業希望者の情報、セミナーの集客など)新たに創業支援に力を入れ始める金融機関が最初に直面しがちな問題が、創業希望者をどのように見つけるかという点である。創業支援セミナーを開催するにしても、金融機関単独では集客に苦戦するのは多分に見られる光景である。この点、日本公庫は国民生活金融公庫*13の時代から創業者支援に取り組んできたという実績もあり、創業希望者との接点は豊富である。*13) 国民生活金融公庫は、現在の日本公庫国民生活事業の前身で、2008年10月1日まで存在した、国民生活金融公庫法に基づく特殊法人。地域金融機関側には、ここに日本公庫とセミナーを共催するインセンティブが生まれる。また、セミナーの共催を通じて、営業店レベルにおいても、日本公庫との連携が深まり、さらなる新規融資に繋がることも期待できる。ア-1 北陸銀行(富山県)営業店が存在するエリアにおいて年6回程度創業セミナーを開催しているところ、そのほとんどが日本公庫との共催であり、日本公庫の集客力に期待している。一方で、当行と日本公庫は協調融資実績が近年増加傾向にあるところ、協調融資案件の融資後のフォローアッ図表4 日本公庫の民間金融機関との協調融資の実績●2017年度の実績(単位:件数・億円)都市銀行地方銀行第二地方銀行信用金庫信用組合その他合計対前年度比全体件数1,0436,5873,1799,7851,78473823,080117%金額1,0833,0037881,6642637027,505102%うち国民生活事業(対創業者等)件数5054,6062,6588,9991,66613818,572120%金額85544303980171162,102119%(注)同一の資金計画に対し、日本公庫と民間金融機関が協議を経たうえで、両者が融資(保証)を実行または決定したもの(日本公庫が集計。両者の融資実績・決定時期が異なる場合も含む)。●実績の推移10,89815,49818,57215,13019,67123,08005,00010,00015,00020,00025,00030,0002015年度2016年度2017年度1,2621,7672,1026,0717,3227,50501,0002,0003,0004,0005,0006,0007,0008,0009,0002015年度2016年度2017年度〈件数〉〈金額〉(億円)(件)国民生活事業全体国民生活事業全体(出典)日本公庫提供資料を基に政策金融課作成。図表5 業務提携・協力にかかる覚書締結状況(2018年3月末時点)都市銀行地方銀行第二地方銀行信用金庫信用組合小計その他合計覚書締結機関数462402598745246498(参考)全機関数464(62)41(40)264107480――業態別締結割合100%97%(100%)98%(100%)98%81%94%――(注1)地方銀行及び第二地方銀行の()内は沖縄県を除いた計数。(注2)信用組合の全金融機関数は、業域信用組合及び職域信用組合を除く。図表6 日本公庫との連携による地域金融機関側のメリット(アンケート)「地域金融機関と政策金融機関の創業を中心とした連携状況」をテーマに、財務局が意見交換を行った地域金融機関65機関を対象にアンケートを実施(複数回答可)89%68%63%58%54%62%28%25%0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%【その他(特筆すべきもの)】地方銀行 19行第二地方銀行 7行信用金庫 31金庫信用組合 8組合 合計  65機関◎リスク分散による、顧客の希望に沿った融資の条件の設定◎創業者の発掘(創業希望者の情報、セミナーの集客など)◎創業支援ツールや事業計画策定支援について日本公庫のアドバイス◎融資審査ノウハウの習得による、地域企業の事業内容に対する「目利き力」の向上○創業融資の連携が創業後の資金調達時の協調融資に繋がる○創業融資の連携によって、その他の分野(農業・事業再生等)にも連携が拡大○日本公庫との連携によって、行政やその他機関との連携がスムーズに◎日本公庫からの優良顧客等の紹介※アンケートの対象には、沖縄県の地域金融機関も含まれ、沖縄公庫との連携状況を示す。10 ファイナンス 2018 May

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