ファイナンス 2018年5月号 Vol.54 No.2

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創業時に必要となる開業資金は、比較的少額であることもあり、日本公庫からの資金調達割合の方が大きいが、事業を継続するにつれて資金需要が徐々に大きくなり、5年後には地域金融機関からの資金調達割合が日本公庫からの割合を上回るとの調査結果がある（図表3）。このことからも、創業支援に際して協調融資を行うことが、地域金融機関にとっても有益であることがうかがえる。政府系金融機関のみ、もしくは地域金融機関のみでは継続的・安定的な金融支援・経営支援を行うことが困難な場合もあることを踏まえ、未来投資戦略2017で示された方針＊11に則って、協調・連携に係る優良事例を収集・分析し、その結果について発信を行うこととした。＊11） 地域での創業を活性化し、事業の持続可能性を向上させる観点から、日本政策金融公庫等の政府系金融機関と地域金融機関・中小企業支援機関・地方公共団体等の連携を促進し、創業前後で切れ目なく経営支援とともに行う創業金融を活性化するため、本年度中に、創業支援ネットワークの取組や地域金融機関との協調融資スキーム等の優良事例の分析・収集・発信を行う（未来投資戦略2017（2017年6月9日閣議決定）より）。＊12） 日本公庫と協調・連携を行っている地域金融機関について、日本公庫からの紹介等を通じて、65機関（地銀26行（地方銀行19行、第二地方銀行7行）、信用金庫31金庫、信用組合8組合）からヒアリングを実施（2017年8月～2018年4月）。2． 日本公庫との連携による 地域金融機関にとっての意義日本公庫による協調融資の実績はここ数年伸びており、小規模企業（創業者等）を対象とする協調融資の実績も同様に伸びている（図表4）。この理由の一つとして、民間金融機関との『業務提携・協力にかかる覚書』の締結割合が94％という状況（図表5）に見られるように、日本公庫が地域金融機関との連携に注力していることが挙げられる。それでは、地域金融機関はどのようなメリットを感じて連携を行っているのであろうか。全国の財務（支）局において、日本公庫と創業支援について協調・連携している地域金融機関から、連携に係る取組内容や、連携のきっかけ、連携のメリット等について、ヒアリングを行った＊12。地域金融機関やその地域におけるニーズによって連携の形は様々であったが、日本公庫との連携について地域金融機関が感じるメリットは、主に以下の点が挙げられる。ア　創業者の発掘（創業希望者の情報、セミナーの集客など）イ　創業支援ツールや事業計画策定支援について日本公庫のアドバイスウ　日本公庫から地域金融機関への優良顧客（創業者）等の紹介エ　リスク分散による、顧客の希望に沿った融資条件（金利引下げ、無担保等）の設定オ　融資審査ノウハウの習得による、地域企業の事業内容に対する「目利き力」の向上図表1　地域中小企業への起業・創業支援の状況17.231.739.152.955.252.213.87.76.511.55.50.04.60.02.20％100％地方銀行（n＝87）信用金庫（n＝183）地方銀行（n＝46）ある程度取り組んでいるどちらともいえないあまり取り組んでいない全く取り組んでいない大いに取り組んでいる（出所）中小企業白書（2015年版）日本銀行作成資料を参照図表2　創業・新事業開拓支援に対する利用者の評価6.88.211.322.522.327.031.431.031.615.214.810.98.79.75.415.514.013.901020304050607080901001999年度2000年度2001年度（％）積極的やや積極的どちらともいえないやや消極的消極的わからない（出所）金融庁：「地域金融機関の地域密着型金融の取組み等に対する利用者等の評価に関するアンケート調査結果等の概要」（2014年8月）日本銀行作成資料を参照図表3　創業後の資金調達推移560.2682.7590.4522.3508.4498.6243.9242.8329.7429.7501.3553.024.031.963.5104.4184.6220.9（828.0）（957.3）（983.5）（1,056.4）（1,194.2）（1,272.5）02004006008001,0001,2001,400（万円）開業時2006年末2007年末2008年末2009年末2010年末日本政策金融公庫民間金融機関その他（出所）日本政策金融公庫「新規開業パネル調査」（注）1．開業時と、2010年までの各年末時点について借入残高が確認できた企業（510社）について集計。廃業した企業は含まない。2．「その他」は地方自治体（制度融資）とその他の公的機関の合計。3．（　）内は借入残高の合計。 ファイナンス　2018 May9政策金融の意義と取組特集