ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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2.本制度の概要(1)賃上げ及び投資の促進に係る税制生産性向上のための国内設備投資や人材投資、持続的な賃上げを促す観点から、十分な賃上げや設備投資を行った企業について、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができる措置を講じました。更に、リカレント教育等人材投資を増加した企業に対しては、税額控除率を上乗せすることとしました。具体的には、賃上げ率対前年度比3%を達成し、国内設備投資を当期の減価償却費の総額の9割以上行った企業について、法人税額の20%を限度として、対前年度賃上げ額の15%を法人税額から控除できることとしました。更に教育訓練費を一定以上増加させた企業については、対前年度賃上げ額の20%を法人税額から控除できる上乗せ措置も設けました(図表5)。賃上げのための税制措置としては、平成25年度に創設された所得拡大促進税制があり、この税制も一つのきっかけとして、4年連続で2%程度の賃上げが実現したと考えられます。平成30年度改正では所得拡大促進税制を見直すに当たり、賃上げについて、平成24年度に比べて一定以上増加という要件に代えて、前年度に比べて賃金を一定以上引き上げることを要件にするなどの見直しを行いました。この見直しにより、これから賃上げを行おうとする企業を強力に後押しできると考えられます。(2)情報連携投資等の促進に係る税制企業の内外におけるデータを連携・高度利活用すること等により生産性の向上を図るなどの取組みを企業が行う際に必要となる投資について、法人税額の15%を限度として、投資額の3%の税額控除又は30%の特別償却ができる措置を講じました。更に賃上げ率対前年度比3%を達成した企業については、法人税額の20%を限度として、投資額の5%の税額控除又は30%の特別償却ができる上乗せ措置も設けました(図表6)。データの企業内外での連携や高度利活用は、生産性を飛躍的に向上させる有力な手段の1つであり、生産性向上に前向きな企業をサポートできる制度となっていると考えられます(図表7)。図表4 企業収益等の動向についてフローストック(年度)経常利益設備投資従業員給与・賞与利益剰余金(内部留保)現金・預金等201248.5兆円34.4兆円147.9兆円304.5兆円190.1兆円201675.0兆円42.7兆円152.7兆円406.2兆円228.5兆円差額+26.5兆円+8.3兆円+4.8兆円+101.8兆円+38.4兆円利益剰余金(内部留保)の推移労働分配率の推移設備投資、従業員給与・賞与、経常利益の推移(%)(兆円)(兆円)(年度)120201620152014201320122011201020092008200720062005200420032002(年度)201620152014201320122011201020092008200720062005200420032002270420内部留保29.731.640.138.643.844.327.933.133.333.334.436.739.542.442.731.036.244.751.754.453.535.532.143.745.348.559.664.668.275.0136.1133.3139.7146.2149.2147.2146.4146.6146.4150.7147.9144.6148.2150.6152.710011012013014015016017004080設備投資(左軸)経常利益(左軸)従業員給与・賞与(右軸)71.073.373.375.373.870.571.271.271.269.365.769.769.770.968.365.966.669.669.667.166.667.870.165.964.666.066.065.365.368.368.3647076ⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅠⅡⅢⅣⅣⅠⅡⅢ201220132014201520162017四半期別調査年次別調査188.9185.3203.9202.2252.4269.4279.8268.9293.9281.7304.5328.0354.4377.9406.272.369.568.867.567.6(出典)財務省「法人企業統計調査」(注1)現金・預金等は、現金・預金と有価証券(流動資産)の和(注2)設備投資はソフトウェアを含まない4 ファイナンス 2018 Apr.

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