ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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1.制度導入の背景・経緯法人税については、平成27・28年度に行った法人税改革において、課税ベースの拡大や租税特別措置の見直し等で財源を確保しつつ、実効税率を20%台まで引き下げる(図表1)ことにより、「稼ぐ力」のある企業等の税負担を軽減することで、積極的な投資や賃上げが可能な体質への転換を促してきました。昨今の経済情勢を見ると、雇用環境が改善(図表2)し、賃上げも持続的(図表3)となっている中、好調な企業収益を背景に企業の内部留保は400兆円を超え、手元資金(現預金)が増えている状況です(図表4)。これまでの法人税改革や、こうした状況を見極めつつ、企業の意識や行動を変革していく観点から、平成30年度改正において持続的な賃上げや生産性の維持・向上のための設備投資を強力に後押しすることとしました。具体的には、賃上げや設備投資に積極的な企業の税負担を引き下げる一方、収益が拡大しているにもかかわらず、投資に消極的な企業には、研究開発税制などの適用を停止するなど、過去最高の企業収益を、しっかりと循環させていく取組みを進めることとしました。以下、賃上げ・生産性向上のための税制の概要を説明します。平成30年度賃上げ・生産性向上のための 税制について 主税局税制第三課 課長補佐 石田良図表1 法人実効税率の引下げ図表2 完全失業率と有効求人倍率の推移●制度改正を通じた課税ベースの拡大等により財源をしっかりと確保して、税率を引き下げる。⇒国・地方の法人実効税率は、28年度において「20%台」を実現。26年度27年度28年度30年度(改革前)(27年度改正)(28年度改正)法人税率25.5%23.9%23.4%23.2%大法人向け法人事業税所得割*28年度までは、地方法人特別税を含む*年800万円超所得分の標準税率7.2%6.0%3.6%3.6%国・地方の法人実効税率34.62%32.11%29.97%29.74%2月:2.5%2月:1.58倍0.200.400.600.801.001.201.401.601.8022.533.544.555.56481248124812481248124812481248124812200920102011201220132014201520162017(倍)(%)完全失業率(左軸)有効求人倍率(右軸)(年度)(出所)総務省「労働力調査」、厚生労働省「一般職業紹介状況」図表3 連合 春闘集計結果(全体・中小)の推移(年)2.592.101.941.921.721.631.701.681.791.861.881.671.671.711.721.712.072.202.001.982.411.791.731.71.341.261.351.561.681.721.721.451.471.531.521.531.761.881.811.871.01.21.41.61.82.02.22.42.62.819981999200020012002200320042005200620072008200920102011201220132014201520162017(%)全体中小企業(組合員300人未満)(出典)連合「春季生活闘争 回答集計結果」 ファイナンス 2018 Apr.3生産性革命に資する税制改正について特集

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