ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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こからきてどこへ行くのかわからない悲しみ、つまり仏法で空くうと言い世せ間けん虚こ仮けと言っていることを、ことさら痛切に感ずる者になったということなのだろうか。家の連中は身支度が整ったらしく、あわただしく韓流スターの会に出発する。生返事でそれを送り出して、ふと時計を見ると1時を大分まわっている。家持の春の憂いに深く共感しても、凡夫の悲しさ、昼過ぎれば腹は減る。さて昼食は何にするかな。冷蔵庫を開けると、韮にらともやしがある。韮にらは春の季語である。韮ともやしを豚肉と炒めて、とろみをつけてあんかけラーメンにしよう。あんかけラーメンいと美味し。無心に二杯食う。ただ、凡夫にしては珍しいことに、満腹になっても、悽せい惆ちゅうの意は、払い除けることができなかった。「よのなかはむなしきものとしる」者になったのだろうか。三月にしてはうららかすぎる日だからだろうか。それとも韮に春を感じ過ぎたのだろうか…。家の連中が戻ってくるのはどうせ遅いだろう。腹一杯食べても、悽惆の意を払い除けることができないのかどうか、もう一度夕食で、春の季語の食材抜きで試してみよう。〈材料〉 中華麺4玉(どちらかといえば細めの麺がよい)、豚ロース(又は切り落とし)薄切り200グラム(一口大に適当に切る)、もやし1袋(洗ってざるにあげておく)、玉ねぎ1個(薄く切り)、人参1/2本(3~4センチの細切り)、韮1/3束(3~4センチ長)、椎茸2本(石突を切り、薄くスライス)、にんにくパウダー小匙1、しょうがパウダー小匙1、日本酒50CC、醤油大匙1、オイスターソース大匙1、中華スープの素小匙2、ごま油小匙2、サラダ油小匙2.片栗粉大匙2(倍量の水で溶く)(1)麺を茹でるために、なるべく大きな鍋にたっぷり湯を沸かす。同時にスープ用として、別の鍋に、ラーメン用の丼に6割の分量の水を4杯入れ、沸かす。沸くまでの間に材料を準備する。湯が沸いたら火を絞っておく。また食卓に、箸、れんげ、胡椒、ラー油、酢などをあらかじめ配置しておく。(2)フライパンにごま油とサラダ油をひき、豚肉を強火で炒め、1分したら玉ねぎ、人参、椎茸を入れ、にんにくパウダー、しょうがパウダーを振り入れながら2分炒め、もやし、韮を入れ、鍋を揺すりながら1分炒める。(3)麺茹で用の鍋から湯400CCをフライパンに入れ、続けて酒、醤油、オイスターソース、中華スープの素を加え、煮立ったら、火を弱め、味見をする。よければ、水溶き片栗粉を回し入れ、火を強めてとろみをつけ、火を止める。(4)スープ用の鍋の湯に、中華スープの素、醤油(いずれも分量外)を味見しながら適量入れ、あっさり味のスープを作る。スープはそのまま弱火で温めておく。(5)スープの味が決まったら、ラーメン用丼4個を鍋のそばに並べ、茹で用の鍋からお玉1杯ずつ湯を入れ、温めておく。(6)麺を袋から出して、ほぐしてから、あんの入ったフライパンを中火で加熱し始め、茹で用の鍋を強火にする。タイマーを麺の指定の茹で時間より30秒短くセットしてから、麺を茹で始める。(7)麺が固まらないよう、大きくほぐすように混ぜつつ、あんも固まらないようかき混ぜ、残り1分になったら丼の湯を捨て、各丼に半分ぐらいスープを張る。(8)タイマーが鳴ったら速やかに、麺をトングで摘み上げて丼に取分け、これまた速やかに、麺の上からあんをかける。(9)大急ぎで丼を食卓に運び、好みで胡椒など振りながら、速やかに食べる。* ラーメンで最重要なのは、麺が延びていないこととスープが冷めていないことであり、スープのコクだの、出汁の風味だのというのは、次順位である。麺を茹で始めてからはまさに時間との勝負であり、麺を茹でる前に、事前で準備できることは全部やっておかなければならない。段取りをよく考えてから取り掛かることが大切である。**麺の上にあんがのるので、スープはあっさりかつ薄味がよい。韮にらもやしあんかけラーメンのレシピ(4人分) ファイナンス 2018 Apr.57新々 私の週末料理日記 その20連 載 ■ 私の週末料理日記

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