ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
47/72

足元ではピーク感も強まる・投資家が不動産価格を評価する際に用いる期待利回り水準(Capレート)は、賃料の上昇を上回る不動産価格の上昇を受けてリーマンショック前を下回る水準まで低下している(図表6)。・また、今後の不動産売却価格見通しを見ても、上昇するとの回答割合が低下している(図表7)。・土地循環図を見ると、価格が高止まりする中で土地取引が減少する左上の象限に移行しかけており、今後の土地取引減少、その後の価格低下が近づいていることがわかる(図表8)。このように、不動産価格のピーク感が強まっていることがわかる。図表6 投資家の期待利回り1.51.82.12.42.73.03.54.04.55.0060810121416Capレート平均賃料(右軸)(%)(年)(万円/坪)(注)Capレート対象:丸の内・大手町地区のAクラスビル平均賃料対象:東京ビジネス地区(千代田区等)図表7 不動産売却価格見通し0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%121212121212121212121212060708091011121314151617(年)(月)上昇持ち合い下落図表8 土地循環図2007年2009年2012年2014年2015年2016年▲8▲6▲4▲202468▲20▲10010(地価前年比変動率、%)(土地取引件数前年比、%)取引↑価格↓取引↑価格↑取引↓価格↓取引↓価格↑(注)対象は東京圏。今後の展望・先行きを見ても、不動産市場については需給要因等による下押し圧力が考えられる。・大規模オフィスビルについては、2020年にかけて大幅な供給増が見込まれる一方で、働き方改革の進展によるオフィス需要減少の可能性が指摘されている(図表9)。・住宅市場についても、総住宅数の増加が続く一方で、空き家率の上昇が見込まれている(図表10)。・背景には、世帯数や東京におけるオフィスワーカー数が減少に転ずる見込みであること等、人口動態の変化も影響していると考えられる(図表11)。・こうした点も踏まえて、不動産市場の今後の動向を注視することが必要である。図表9 大規模オフィスビルの供給状況0501001502000809101112131415161718192021見通し(年)(万m2)(注)東京23区の延床面積10,000m2以上の物件。図表10 空き家率の推移13.530.40510152025303540450102030405060708090081318232833空き家数総住宅数空き家率(右軸)(百万棟)(%)(年)見通し(注)見通しは野村総研資料による。図表11 世帯数とオフィスワーカー数の予測25303540455055600005101520253035東京におけるオフィスワーカー数全国の世帯数(百万世帯、10万人)東京都による予測(2015年)社人研による予測(2018年)(年)(注)オフィスワーカー数は、職業分類別の就業者数から計算。(出典)国土交通省「建築着工統計」「地価公示」「不動産価格指数」、日本銀行「貸出約定平均金利」「貸出先別貸出金」、日本不動産研究所「不動産投資家調査」、三鬼商事、不動産証券化協会「不動産投資短観調査」、法務局「法務統計月報」、みずほ総合研究所、森トラスト、野村総研、総務省「住宅土地統計調査」「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2018 Apr.43コラム 経済トレンド 46連 載 ■ 経済トレンド

元のページ  ../index.html#47

このブックを見る