ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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ていません。この電動車椅子は最初台湾と中国で作ろうとしたのですが、できなかったのです。WHILLを立ち上げた私の後輩が「ダメだ、全然僕らの言っているものが作れていない。どこかに作れる所はないか」と相談に来たので、墨田加工と浜野製作所(研修部注)を紹介し、この2社の尽力により、製品化にこぎつけたのです。台風発電のチャレナジーについても同様です。設計からはじまり、特許がとれるようになったのは、みんな浜野さんのおかげです。町工場が一緒に試行錯誤してくれたのです。設計図を持って中国に行っても作ってくれないのです。これが製造業とものづくりの違いなのです。今製造業は世界に行きました。きれいな設計図があれば製造業はうまくいきます。でも、日本の強さはものづくりです。ものづくりには知識や経験がそこに入るのです。この知識と経験がなくなれば日本には何も残りません。なので、ものづくりを活かさなければいけないのです。製造業ではないのです。私たちは、町工場とものづくりベンチャーを結び付けて「次のトヨタ」を作り出そうとしているのです。そうしたらおもしろいですよ。台風発電のチャレナジーはやがて世界一のエネルギー会社になります。そのクリーンエネルギーの会社を支えたのが町工場なのです。これを「イノベーションの連鎖」と私は呼んでおります。「次の大企業」を作るのが町工場の使命なのです。町工場とベンチャー、さらには新しい事業に取り組む大企業とでイノベーションが起こるのです。アップルやヒューレット・パッカード等の世界に大きなインパクトを与えた企業はガレージからスタートしました。私達も新しいビジネスが生まれる拠点をガレージと称して墨田区に作ることにしました。そこにベンチャーの支援と、町工場によるものづくりのトータルサポートと情報発信基地を兼ね備えた2,000m2の広さを持つ施設を作りました。そこでは、町工場とベンチャー企業だけでなく、大企業も交えてものづくりを通した事業をどんどん作っていきます。2018年3月1日にオープンします。(4)日本のものづくりとインバウンド私がなぜ日本のものづくりにこだわるのか。世界に行くと、フィリピンもシンガポールもマレーシアも、ものづくりができないのです。製造業は確かに移動して来たけれど、ものづくりができないのです。こうした国々の人がプレゼンの場で「これでフィリピンの課題は解決できます」と説明するので、それを聞いて私が「わかった、出資するよ。いくら出したら作れるの?」と聞くと、「まだアイディアの段階です。お金をもらってもどうやって設計にもっていくかわからない。」と答えるのです。日本の町工場ならすぐ作れるレベルです。そこで、「インバウンドさせよう」と考えました。ものが作れないベンチャー企業をシンガポールから連れて来て一緒に作って、それに投資して、シンガポールに戻して市場を開拓してもらうのです。仲間になるのです。私たちはものづくりの拠点です。製造業の拠点は中国やフィリピンでいいのです。「インバウンドグローバライゼーション」という言葉は昨年新聞等にも掲載されましたが、ものを作りたければインバウンドで、羽田空港を利用して町工場に来い。そこにはものづくりがあって支援も投資もある。そこでプロトタイプができたなら、大量生産は台湾でもいいのです。日本でものづくりをしっかりやって、外に戻す。チームとなって世の中の課題を解決していく。これが日本のやるべきことでないかと思います。日本は東南アジアと組まないともう無理です。東南アジアでは若い人がどんどん生まれていますが、日本ではどんどん減っている。一緒にやればいい。東南アジアの人口と日本の人口をトータルで見ると、増えている。ここと手を結ばないでどこと手を結ぶのか。中国とは無理です。中国はAIの分野ではナンバーワンです。学術のレベルでも日本は負けています。でも、ものづくりは日本が圧倒的に強い。AIとかIoTとかフィンテックといったものはもう追わないことです。無駄ですから。ものを作ろうということです。これ以外で日本は勝てません。私たちは、海外の人をどんどん町工場に連れて来て40 ファイナンス 2018 Apr.連 載 ■ セミナー

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