ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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いか。メガベンチャーを創ろう、というのが目的であり、連携協定の締結は地元で大きなニュースになりました。こうした取り組みがうまくいくかどうかはわかりません。でも誰かがやらなければならないのです。そこでこの連携協定の下で「熊本テックプランター」というものを始めまして、熊本で大学発のチームをどんどん発掘していった結果、新たに12のテクノロジーベンチャーを立ち上げることができました。そこに地銀が出資と貸付けをしっかりとやって、今雇用を生み始めています。幸いなことに我々には大企業の仲間がおりますので、事業がうまくいかなくなった場合には仲間の大企業やリバネスが引き取ることも含めて、全体のエコシステムの構築を行っております。大学がある地域ではこの施策は成り立ちます。でも地域に大学がないと難しい。知識がないと新しい事業はなかなか生まれてこないのです。最近は大学がない地域からも地域再生への支援を求める声が私たちのところに来るのですが、それに対して私たちは答えに詰まります。まだ解が見えていません。テックプランターの地域開催は熊本だけでなく、滋賀、徳島、つくば、宮崎、沖縄でも行われており、今年は更に多くの地域が入ります。私たちは触媒であり、コミュニケーターにすぎないのです。プラットフォームを地元に作るには本気で地域を良くしたいと考える地元の熱い人が必要なのです。そういう地元の人がいるなら、我々は一緒にやります。2022年までに47都道府県の国立大学のある地域すべてにこの施策を作りたいと考えております。(3)町工場の跡取り問題次は「町工場を使って何かできないか?」についてです。昨年末の新聞に「この10年で黒字の町工場が倒産する」という記事が載っておりました。売り上げもあるし、利益もある、でも跡取りがいないという問題です。皆さんが思っている以上に日本の町工場の実力はすごいです。跡取りがいないだけで、従業員5人ぐらいで2億円稼ぐ、などという会社もあります。リバネスはすでに何社かの町工場に出資しています。グループ会社化するのです。跡取りがいないのなら、我々の会社が跡取りになるのです。町工場が大企業のために何かを納品するのではなく、ベンチャー企業とともに育つような新しい仕組みに変えていかないといけないのです。ベンチャー企業が町工場にものづくりを頼む。やがてベンチャー企業が大きくなっていくと、町工場をグループ会社化するのです。町工場のノウハウをベンチャー企業が受け継ぐのです。町工場とベンチャー企業が一緒になって、跡取り問題とベンチャー企業育成という問題を同時に解決することができるのです。こんなことを今考えています。まさに一石二鳥です。何もしないと、あと12年で墨田区の町工場はゼロになるそうです。ゼロになってしまうと復活は難しいのです。昨年トヨタがパナソニックと組んで電気自動車に進出するという衝撃的なニュースがありました。大企業が生き残りをかけて死に物狂いで電気自動車についていくしかないという判断をしたのです。このニュースの本質を理解している人がどれだけいることでしょうか。エンジン自動車がなくなると、名古屋の町工場は全滅です。トヨタは町工場がサポートしてくれたからこそ、これまで電気自動車にはいかなかった。でもそうは言っていられなくなったのです。トヨタにもたくさんの従業員がおり、彼らを守らなければならないのです。町工場は、トヨタが世界市場に出ていくためにネジを作り、エンジンを作り、ずっとサポートしてきました。技術はあります。それならその技術をほかのことに使っていければ、トヨタも町工場も両方救えますよね。町工場は10年ちょっとでなくなる。お金をつぎ込んでも無駄です。行政の補助金でも不可能ですし、地銀の融資でも不可能です。新しい事業を起こさない限り無理なのです。そこでリバネスは考えました。このまま日本の製造業が衰退していくのは嫌だ。ものづくりをもう一回復活させるにはどうしたらいいか、それで今ベンチャー企業と町工場を結び付けております。WHILL(株)という会社が開発した次世代型電動車椅子は、全部日本の町工場が作っています。これは墨田加工という会社と浜野製作所という会社が作っていますが、この2社がなかったらこのプロダクトはでき ファイナンス 2018 Apr.39連 載 ■ セミナー

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