ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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(2)知識製造業このQPMIサイクルの考え方をビジネス、事業の世界に持ち込む時期が来たのです。研究の場合と同様に事業には正解がないからです。では、PDCAサイクルは間違いなのかと言うと、そうではありません。正しいのです。QPMIサイクルをぐるぐる回していくといつの間にかビジネス、事業になっていく。そうなるとPLANが立ち、PDCAサイクルが高速回転していく。本田宗一郎などの「世界を変えたい」という熱い個人が、ビジネスの世界でQPMIサイクルを回していたのです。QPMIサイクルとPDCAサイクルの組み合わせがイノベーション創出から拡大に繋げるのための一番重要なところです。リバネスはたくさんのプラットフォームを作り、QPMIサイクルとPDCAサイクルを回しながら、社員がコミュニケーターとして様々な人たちと一緒に課題を解決するためのプロジェクトを創っています。「知識製造業」という概念、すなわち、いろいろな所にあるいろいろな知識を集め、課題に対して業種、業態といった立場を超えて、課題解決のためのプロジェクトを立ち上げる。これは研究者がもともとやっていたやり方であり、これがリバネスの概念です。ただの「場」なのです。だからみんな来てください、ということで、多くの大企業、ベンチャー企業が当社のプラットフォームの中で知識製造業をやって、様々な課題を解決します。「世の中をよくすること」がリバネスの概念なので、儲かる、儲からないは気になりません。事前にいただいていた「なぜ日本では起業家が少ないのか」という質問に対してですが、子供の教育も含めて「PLAN(計画)を出せ」ではなく、定型化された教育から抜け出し、個人のQUESTIONやPASSIONを中心に人材を育成し、教育し、発掘するシステムが今の日本はないことがその原因なのです。4. 地域とものづくりベンチャーから日本の再生を図る(1)地域再生及び町工場衰退への対応「理科離れ」と「ポスドク問題」といった課題には解決の目途がつきました。次は「地域の再生」という課題です。これに関して本日の最後のテーマである「地域とものづくりベンチャーから日本の再生を図る」に入っていきます。地方の疲弊は国そのものの疲弊につながっていくことはみなさんもよくご存じのことと思います。では、それに対して地域の施策は行われているでしょうか。地銀に任せて商店街にお金を投入しても何も生まれません。地域の食材のブランディングにしてもどうでしょうか。やはり「事業を創る」という概念を地方に入れていくことが必要なのです。「地方だから事業が作れない」というのは間違いです。オムロンはもともと熊本です。ヤンマーは滋賀です。ベネッセは岡山です。ベンチャーの多くは地方から生まれるのです。なぜならゆっくり研究ができるから。そして地域を守るというミッションがあるからです。「地域の再生を何とかしてほしい」との要望に対して、地方のベンチャー企業をもう一回使おう、というのが私たちの考えです。地域の産業の活性化は、その地域に大学があればできると考えています。一方、「日本の町工場がなくなってきている。何とかしてほしい。」という声もあります。そこで「地域一体型でものづくりベンチャー企業を作ろう」と「町工場を使って何かできないか」という2つの施策を考えました。(2)大学発の次世代ベンチャーの発掘・育成1つ目の例として、2016年2月に熊本県や地元地銀等と10年のスパンで取り組む「次世代ベンチャーの発掘・育成に向けた連携協定」を締結いたしました。「熊本の地域産業がどんどんなくなっていく。このままではまずい。新しいことを起こさなければいけない。」と熊本の皆さんがおっしゃるので、それなら一緒にやろう、ということになりました。そこに出てきたのが地銀です。地銀もどこに貸していけばいいのかわからない。今までの商店街にお金を貸していても「商売」をやっているので潰れていく。回収できない。だから怖くて貸せない、という悪循環に陥っている。そこでリバネスが関与して、大学の技術を入れて、そこに地銀が資金を投入して一緒になってやればもう一回地域から大きな会社を創ることができるのではな38 ファイナンス 2018 Apr.連 載 ■ セミナー

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