ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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(4)リバネスの社員、組織、働き方リバネスは全員が研究者で博士か修士です。専門分野も多岐にわたっており、文系理系を問いません。国内では東京、大阪、沖縄、熊本、山形に支店があり、海外ではシンガポール、マレーシア、アメリカ、イギリスの4か所に子会社があり、世界展開しております。これは日本が世界に飲み込まれてしまわないように、世界の中での日本の位置をちゃんと確かめるためです。働き方に関しては、リバネスには副業という概念はありません。ベンチャー企業をやりながら、リバネスの社員だったり、大学の先生をやりながら、リバネスの役員をやったりと様々です。給料は好きなところから好きなだけもらえばいい。それで家族を養っていけている。時代は変わっています。3.QPMIサイクルとは(1)「コトを仕掛ける」ために必要な概念とは先ほども申し上げました「商売と事業の違い」ですが、商売にお金を投資しても無駄です。人も減っているし、日本の総マーケットを考えたら、グローバルマーケット、人口の増えているところでしか商売は成り立たない。商売にお金を突っ込んでいる限り日本経済は良くなりません。事業をやらなければなりません。誰もやっていない新しいことを起こして生業にしていくことです。AmazonもGoogleも市場を取りに行ったのではありません。事業を作ったのです。日本発で世界規模の企業になったところはみな事業を作りました。事業をやっているところにお金を投資していかないとこれからの日本の発展は難しいでしょう。商売は、マーケットのニーズに対してものを動かすだけです。ニーズが顕在化しているものを買い取るだけなので、戦いです。完全にレッドオーシャン(競争の激しい既存市場)です。そして資本原理が働きます。労働者をすごく安い給料で雇わないと儲からない。一方、事業はおもしろいのです。自分の情熱に従ってできるし、自分がやらないとこの世に存在しないのです。ミドリムシは(株)ユーグレナの出雲充社長がやらなかったら存在していないのです。リバネスのプラットフォームにしても私が熱意を持ってやっていなかったら存在していないのです。そして事業をやることで世の中がちょっと変わるのです。これが事業の醍醐味です。そしてやっていて楽しい。これが事業です。これからは「コトを仕掛ける」のが仕事になっていきます。「今までがこうだったから…」と従うのではシュリンクしていってしまいます。20世紀は右肩上がりだったので、超天才に「従う」でよかった。でもこれからは何が起こるかわからない。だから「仕掛ける」のです。一人一人の個が命令系統ではなくて、自分の意志に基づいて「コトを仕掛ける」のです。では、「コトを仕掛ける」ための概念として何が必要か」ということになります。今までPDCAサイクルというものがありました。でもこれからはP(PLAN)からは始まらない。PLANはたてられないのです。この国をよくするPLANは誰も描けない。正解がないからです。では、何から始めるか。個々のQ(QUESTION)すなわち課題から始めてください。何が課題なのかを自分で描いてください。QUESTIONは崇高なものでなければなりません。戦争を起こしたい、などというのではいけません。そしてその課題に対してP(PASSION)すなわち情熱があるかどうか。次がM(MEMBER,MISSION)です。こういう課題があり、それに対して情熱があることを伝えて、「仲間になってください」と頼むのです。でもここが弱いですね。漫画に例えると、これからは一人で努力する「ドラゴンボール」型ではなく、仲間を募る「ONE PIECE」型です。仲間を募り、そしてMISSIONすなわち旗を掲げるのです。ここまで行くと9割方、イノベーション(INNOVATION)の種を作ることができます。QUESTION、PASSION、 MEMBER・MISSIONがあればINNOVATIONにつながっていくのです。このQPMIサイクルの考えは研究の世界では当たり前のこととしてやっていたことを私が可視化しただけです。研究の分野ではIはINNOVATIONではなく、INVENTION(発明、発見)になっています。 ファイナンス 2018 Apr.37連 載 ■ セミナー

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