ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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ぐ最先端に追い付きますよ。いわば、知識の高速道路を作るのです。大学で面白い研究があったら、すぐこの高速道路に乗せて学校現場に運んでいくのです。子供たちはゲノム編集なども「おもしろそうだ、やってみよう。」ということになります。こうした小中高生に対する最先端の科学の出前授業を通じて次世代育成をすることによって、「理科離れ」を減らしていくとともに、「ポスドク問題」も解決していきました。当社にインターンとして来た若い学生たちのコミュニケーション能力が、出前授業を通じて向上していき、大企業や商社の研究所やコンサル会社等から就職の誘いが増えてきたのです。経産省もこうした動きに注目してくれて、支援していただきました。創業以来、10万人以上が私の生徒です。この中から今MIT(マサチューセッツ工科大学)に行っている若者もいます。私の授業を受けて東大に行き、当社に入ってくる若者も出てきました。こうした動きを見て、大企業からも子供の教育をやらせてほしいと言ってきました。私たちのプラットフォームを使って最先端の教育を子供たちに出前授業することが文化になったのです。我々が裏方となり、大企業の研究所の方々も学校現場に行って出前授業に乗り出していくようになりました。それによって、次世代も大企業の方々も共に育つことができ、それらの取組みが我々にとっても大きなビジネスになりました。初めに事業計画ありきではなく、「これをやったら日本の子供たちのためになる」というビジョンのもと、多くの企業を引き連れて学校現場に入っていったのです。私たちは研究を進める中高生に研究を発表する場を創りたいという思いから、「サイエンスキャッスル」という中高生向けサイエンス学会を始めました。昨年は国内外5大会で年間参加者2,000人を超え、日本・アジアで最大規模の学会になりました。日本で最大の小中高生の学会は文科省ではなく、リバネスがやっているのです。また、リバネスは、研究に情熱を燃やす若手の研究者を応援したいという思いから、独自で研究助成制度を作りました。利益が出たらお金を配ります。それを元に採択された研究者達は技術を開発します。そうやって研究の加速を応援しています。これは大学の研究者だけでなく、「サイエンスキャッスル研究費」という形で、研究をやりたい小中高生に対しても研究費を出すこともやっております。「課題を設定して、プロジェクトを立ち上げ、他の人々を巻き込んでプロジェクトを遂行していく」これがリバネスの仕事のやり方です。大学でもない、企業でもない、国でもない、リバネスという新たな場所、誰でも参加できるプラットフォームを創ったのです。こうした仕事のやり方を通じて「教育応援」に加えて「研究応援」、「人材応援」といった分野にも取り組んでまいりました。(3) 研究成果の社会実装を加速するエコシステムの構築そして「創業応援」です。子供を教育し、大学院生の人材育成をしました。研究者のために分野を超えた仕組みを作りました。今新しいイノベーションが起きております。その中で「この新しい分野連携したアイデアを元にベンチャーを興したい」との声が上がってきました。そこで作ったのがアジア最大のシードアクセラレーションプログラム「テックプランター」です。事業の種をさらに磨きをかけ、世の中に出してビジネスを創る、というプログラムです。ここでも新規事業に困っている大企業と連携して、ものづくりやバイオといったIT以外の分野でビジネスエコシステムを創っております。現在「リアルテックファンド」という、ユーグレナとSMBC日興証券、そしてリバネスで合同会社を立ち上げ、94億円のファンドを運営しています。経産省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の認定ファンドです。例えばパートナー企業がテックプランターで新たに生まれたベンチャーに出資を検討したとしても、まだまだプロトタイプも事業計画も無いような状態なので簡単に決断することはできません。そこで、ファンドという形で資金提供やパートナー企業との連携支援、営業のサポートを行うことでベンチャーが大企業から投資を受けられるまで成長を促進する仕組みも創っています。これらの我々の取組が、日本のエコシステム、特にものづくり分野でのイノベーション創出を支えているのです。36 ファイナンス 2018 Apr.連 載 ■ セミナー

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