ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
38/72

財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Institute1. 課題解決のためのプラットフォームづくり皆さんこんにちは。これからどんどん人が減っていきます。若い人たちも減っていく中で、どうやって日本という国を良くしていくのか、ということがこれからすごく議論されていくことと思います。本日はそうした動きの中で私たちが取り組んでいることについてお話しさせていただきます。私がリバネスという会社を立ち上げたのは学生の時、2002年です。当時大きな課題であったのが「理科離れ」と「ポスドク問題」でした。私が大学院に在籍していた時期に、博士号を取得して研究を一生懸命やっている人たちの就職先がない、という大きな問題がありました。このままでは自分のやりたい課題の解決ができなくなるだろうと考えて、この会社を立ち上げました。国の機関に就職して、そこで解決していくという道もありましたが、当時の私は、世の中に課題があるなら、省庁や民間企業に入らなくても、その課題を解決できる組織を自分で作ったら面白いじゃないか、ということで、「国」や「企業」でもない第3の場所、つまり「リバネス」という場を創ろうと考えたのです。リバネスという社名は、「巣立つ」という意味のLeave a Nestに由来します。これからの若い世代や研究成果が世の中に巣立っていく場所を、民間も国もNPOも誰もが関われる、そういうプラットフォームを立ち上げようと考え、24歳、大学院修士2年の時に学生15人で立ち上げたのがリバネスという会社です。本日は「なぜ日本では起業家が少ないのか」「どうすれば起業家を増やしていけるのか」「他の組織との連携を進めるため必要なことは何か」といったご質問も事前にいただいておりますので、リバネスという会社の取り組みをご紹介するとともに、そうしたご質問についてもお答えしていきたいと思います。実は、リバネスを立ち上げた3年後に、後輩2人と(株)ユーグレナを立ち上げました。ミドリムシで有名な会社です。無事に東証一部上場を果たし、時価総額1千億円の会社です。こういうところから、私は「研究者であり、起業家である」と言われるのですが、その経験をもとに、107社のベンチャー企業をサポートしております。日本で新しいベンチャー企業のエコシステムを創ることは、制度や文化、環境の観点から見て非常に難しいのですが、これはやり甲斐があって面白い。起業家は大成功すると税金対策のためか海外へ移住することが多い。実際、海外に行って、数多くの投資家と一緒に新しいベンチャーエコシステムに入れてもらって資金を回すことは簡単です。しかし、日本のものづくりの力を使って、エコシステムを作ることは日本人でないとできない。だから私は日本から逃げずに、ベンチャー企業を興すためのエコシステムづくりに取り組むことに決めました。平成30年1月23日(火)開催職員 トップセミナー丸 幸弘 氏(株式会社リバネス代表取締役CEO)日本を再生する 「ものづくりベンチャー」の仕掛け~未来の仕事を創り出すエコシステム~演題講師34 ファイナンス 2018 Apr.連 載 ■ セミナー

元のページ  ../index.html#38

このブックを見る