ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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が、私は全く関与してないので知る由もなく、笑ってごまかすしかない。*1その後も何度か入国の際に、持ち込み品没収の危機に瀕したが、国税総局長の名刺を見せて「大切な友人へのお土産だ」と説明すれば、大体事なきを得た。ホテルにチェックインして部屋に入ると、天井にkiblatと書かれた矢印が貼ってある。メッカのカアバ神殿の方角を示しているらしい。ムスリム宿泊客はこの方向に向かってお祈りするのだろう。風呂に入ろうとバスタブの蛇口をひねると、真っ黒な水が出てきた。フロントに電話して苦情を言うと「5分くらい流し続ければ透明になる」とあっさりした対応。実際そのとおり透明になったので、汗を流して疲れを取った。翌朝4時半ごろ、礼拝呼びかけ(アザーン)の声で起こされる。結構な大音量で、耳栓して寝た方がよい、と先輩に忠告されたことを思い出した。ところが、慣れてくると実に耳に心地よいサウンドで、早寝早起きの規則正しい生活習慣も手に入れることができた。日本に帰国してアザーンが聞けなくなると、少し寂しく感じるかもしれない。2.インドネシア財務省国税総局今まで数多の外国税務当局へ訪問したが、2009年に竣工した新庁舎は私が知る限り一番立派である(写真1)。まずは敷地内に立派なモスクが建っていることに驚かされる。礼拝時間になると多くのムスリム職員が列をなしてモスクへ向かって道を塞ぐため、車が通行できなくなる。特に金曜午後の一斉礼拝は、モスクの外にも跪く職員があふれ出て壮観である(写真2)。庁舎内も、礼拝を終えた多くの職員がエレベーター前に列を作って順番待ちしており、なかなか乗れそうもない。(教訓1:庁舎内の出入りは礼拝時間を避けるべき。)エレベーターには広報用TVが設置されていて、幹部からのメッセージや、職員対抗球技大会やカラオケ大会等のレクリエーションの模様が紹介されている。毎週金曜の朝はエアロビクス教室が開催され、100人*1) ジャカルタ都市高速鉄道(MRT)は2013年に工事着工し、当初は2016年に開業予定との報道もあったが、その後延びに延びて、2018年8月のアジア大会までには必ず、との悲願もむなしく、2019年4月の大統領選までには何としてでも、という最後のお願いも怪しくなってきている。近くの職員が一生懸命踊っている。日本の国税の職場も、かつてはこういうのんびりした雰囲気だったような気がする。職場のトイレでは、男性小便器の中に謎のノズルがあるのが気になった。何に使うのかと不思議に思っていると、礼拝前のお清めに大事な部分を丁寧に洗うためであった。用を足している最中に隣の人が洗い始め写真1:27階建ての国税総局庁舎。JICAオフィスは17階写真2:職員が礼拝中の国税総局敷地内モスク22 ファイナンス 2018 Apr.連 載 ■ 海外ウォッチャー

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