ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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●おわりに今回、税関研修所の関税技術協力活動について、皆様の理解を深めて頂くために、少し掘り下げてご紹介致しました。途上国においても関税制度の整備や電子システムの導入による処理の迅速化が進み、国際標準とされる知識の理解といった基本的な内容をスクール形式で教えるものから、国毎の事情や直面している課題に即したより専門的で極めて技術的な討議を行うゼミ形式(ワークショップ形式)のものが求められるようになってきています。当研修所では、これらの高度な要請に応えられる幅広い知見と経験を有した関税技術協力の専門家の育成を効率的に行いつつ、より有意義な技術協力の実施ができるよう試行錯誤しながら前進を続けています。税関研修所は、自ら課題を探し改善を図っていけるような組織でありつづけたいと希望しています。今後とも、当研修所の業務についてご支援とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。私は、ミャンマー税関の輸出入コントロール(監視取締)部門に所属している税関職員です。ミャンマーでは、知的財産権の保護のための体系的・近代的な法令が整備されておらず、税関においても、関税徴収や密輸対策に重点がおかれ、知的財産権侵害物品の取締りは、まだまだ十分な取組が出来ていない状況にあります。国内市場には様々なニセモノ製品があふれています。私は、2015年に世界税関機構(WCO)の奨学生として日本の大学の税関特別コースへ1年間留学し、そこで税関研修所の教官等から知的財産取締りにかかる講義や個別指導を受けました。帰国後、ミャンマー税関の知的財産ワーキング・グループに選抜され、知的財産部門の設立や取締りマニュアル作成等の検討に従事し、自国の新たな制度作りに貢献できる喜びに加え、日本での研修で得た知識が大いに役立っていると実感しています。2017年2月に、二国間の税関協力として、税関研修所の1週間の知的財産受入研修に出席し、ミャンマー税関が直面する課題について、教官や講師陣と充実した議論を重ね、何をどうしていくべきか明確な道筋を見出すことが出来ました。折しも2017年3月に、WCOアジア大洋州地域で知的財産水際取締りの合同作戦が行われ、これまでに学んだアイディアを生かし、今までにない良好な成果を得ることができました。また、2017年5月には、税関研修所で開催された当該合同作戦にかかるWCOの結果報告・勉強会に自国代表として参加し、この結果を発表するとともに、更なる改善点について有意義な意見交換を行い、次のステップに向けて歩み出したところです。私は、知的財産分野においてWCOの認定専門家の認定試験に挑戦し、税関研修所が実施しているような関税技術協力で講師役を務めていきたいと考えています。また、将来、ベルギーにあるWCO本部において、世界全体の税関のために活躍したいと希望しています。税関研修所による国際協力を通じ、ミャンマー税関だけでなく、自分自身も成長していくことを感じています。受入研修修了生による声 (本人へのインタビューをもとに作成)20 ファイナンス 2018 Apr.

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