ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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を計画する必要があり、実施面では専門知識を分野横断的に組み合わせ、更に具体的事案から政策の決定過程や理由を議論する等、ソフト面での創意工夫が肝要となっています。●税関研修所の挑戦関税技術協力は、一方的な日本の制度の紹介や押し付けに終始してはなりません。税関研修所では、参加者が目標を自身で設定・達成し、かつ、自助努力と持続可能性が確保できるよう、自ら考え実行できる力を持つ中堅職員を育成していくことを目指しています。また、対象国と一緒になって、真摯に解決策を模索していくことにより、参加者との信頼関係を醸成することに加え、既参加者を集めたリユニオン会合の開催や、地域合同の不正貨物の取締作戦とその結果を使っての勉強会といった地域協力も推進しています。このような長期的な視点に立った支援を行うためには、技術協力の有能な担い手の確保が不可欠であり、日本国税関の職員向けの人材育成も重要であると考えています。税関研修所では、平成10年(1998年)より、関税技術協力に携わる若手職員を対象とした研修を実施しています。実際に途上国税関職員の受入研修標準的な受入研修のスケジュール例(知的財産取締コース)1限目2限目3限目4限目1日目オリエンテーション知財取締りの意義カントリー・レポート知財関連の国際条約2日目制度の導入改善に向けて何をすべきか日本の知財取締り主要国の知財取締り権利者との協力3日目権利者を視察権利者による講義日本税関の現場視察4日目情報共有とリスク分析広報・啓発活動事例グループ討議/発表5日目ファイナルレポート作成ファイナルレポート発表修了/評価会議受入研修の成功に向けた5つの秘訣と1つの喜び自助努力促進のために●対象国が、自国の状況を事前に分析し、「カントリー・レポート」として直面する課題を発表します。●「制度の導入改善に向けて何をすべきか」との講義を設け、課題解決に向け、自身で何を考えていくべきか、また、この受入研修から何を学ぶべきか議論し、動機づけと意欲向上を行います。●主体性や当事者意識を基とした研修プランを追求しています。日本の制度は一つの実施例●技術協力は、単なる日本の制度の紹介に終始したり、こうすべきといった一方的な押し付けであってはならないと考えます。●まず、意義や順守すべき国際標準(条約等)を学び、その適用事例として日本や主要国の取組を紹介し、それら事例と自国との比較により、自国に足りない部分や改善の方策を見出してくよう導いていきます。民間の貿易関係者との連携●国際貿易の主役は、政府機関ではなく、民間の貿易関係者であることを認識し、利用者の利便性向上も必要不可欠な観点であることを習得していきます。●知的財産取締りの場合、権利者の立場や取組を理解し、制度の改善や運営、真贋判定のための協力体制の構築に生かせるよう、権利者訪問や連携/協力の重要性について説明を行います。現場での学び●座学として理解することと、実践することは全くの別物です。具体的にどのように制度を運用しているのか、税関の現場での業務を実際に確認し、また、業務の効率化や効果向上を追求するために、日々どのような努力や工夫を図っているのか、視察する機会を設けています。●当たり前だと思っている事務処理(書類保存や連絡方法等)から、改善案が見出されることも。ケースメソッドとグループ討議●具体的な課題をグループ毎に討議し、解決策やその結論に至った理由を発表させ、かつ、その評価について更に議論を深めていくことで、政策を検討/決定する能力を養っていきます。●発表にあたっては、局長への説明を想定し、短い時間枠の中で改善策の合理性や留意点を明確に説明しきる力を探求します。グループ対抗戦として、楽しみながら技術向上を目指します。受入研修の醍醐味。それは…●研修の冒頭、「制度改革の主役は“あなたたち”。専門家として、第一人者として、名前の残る仕事を」との声掛けに、真剣な表情になる参加者の目を見た時。●単なる聴講ではなく、課題解決に向け、双方向の議論が積極的になされ、終了時間を忘れた時。●研修後、対象国での取組に進展が得られ、二人三脚での議論や努力をお互いに認め合って、笑顔を交わすことが出来た時。※説明文中の灰色マークの濃度・下線とスケジュールの各講義枠の階調・下線はリンクしています。関税技術協力要員養成用の国内研修を受講する日本税関職員も、この受入研修に出席して実践経験を積む!日本税関職員 ファイナンス 2018 Apr.17

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