ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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●受入研修の対象者受入研修参加者の地域別割合を見ると、やはり日本との貿易のつながりが強いアジア諸国が6割超となっており、アフリカ諸国や中南米の国々がそれに次ぐ状況となっています。参加した途上国の税関職員は、その後自分の組織に戻り、自国の制度の改善や導入に貢献することが期待されています。中には、税関組織の幹部に登用され、日本国税関との良い協力関係を保ちながら、組織的な発展・改善の推進にリーダーシップを発揮している方もいらっしゃいます。当研修所としては、受入研修の実施により大切に育てた種が、その後の実務・実践面でのやり取りや協力を通じて徐々に芽生えて成長し、最後に、途上国税関の制度改正などの形で大きな花となって咲いたとき、大変うれしく励みになると感じるところです。●受入研修実施の流れ受入研修の準備は、対象国税関が抱えている課題を詳細に把握することから始まります。導入や改善が不可欠な制度や手続は何か?日々の業務の中で直面している課題は何か?現地貿易関係者からの要望はあるのか?などを、対象国の税関や我が国の大使館・JETRO・現地日本人商工会などからヒアリングし、特定していきます。それらの情報や国際的な動きを踏まえて、現地の税関行政が現在どのような状況にあるのか分析を正確に行い、その結果から、相手国税関に対し、何を、どのように、どこまで対応できるようにさせるのかなど、研修プログラムの具体的な内容を考えていきます。一般的な受入研修では、事前に参加者による問題点の自己分析を課しており、研修初日に自国の現状を説明してもらいます。次に、その課題を解決するための基礎的な知識として、関係する国際条約や国際的に推奨されている運用方法を修得します。そして、それらを日本や他国でどのように適用しているのかを紹介し、個別事例の研究を行います。途中、具体的な実施状況や処理方法を確認するために、税関の現場視察も行います。その後、対象国の事情を考慮しながら、研修内容に係る自国での応用策や改善策について議論し、最終日に、その検討結果を発表して、今後の実践に活用してもらいます。また、最後には、参加者と共に研修全体の評価会を実施し、研修継続の必要性や今後の研修の改善の検討に役立てることとしています。受入研修の修了後には、研修参加者に対し、現地での同僚や関係職員への2次研修として習得事項の共有化を促し、また、フォローアップとして、事後にどのような取り組みを行ったかの報告を求め、次の受入研修の計画に向けた検討材料として使用していきます。●関税技術協力の難しさ税関は、不公正な貿易を許すような国境の抜け穴をつくらないよう、貿易相手国だけでなく、地域や世界全体で取り組むべき共通の課題が数多くある上、各国税関はそれら課題に対して同程度の行政能力を保持することも要求されます。各国の関税政策・税関行政は、社会・経済の発展度合いはもとより、陸続きの国境等の地政学的に異なる要因や保護すべき国内産業の相違等の個別事情によって対応が異なっています。また、税関業務の内容も、様々な種類の貨物や輸送形態を取り扱い、関税等の税額算定から密輸のリスク分析、知的財産の保護など非常に幅広い分野を取り扱っています。したがって、関税技術協力の実施にあたっては、これらの相違を見極めたテーラーメードの研修受入研修の地域別割合(2016年度)アフリカ54名 13.7%その他のアジア地域42名 10.7%その他69名17.6%ASEAN219名55.7%中南米9名2.3%アジア261名66.4%過去5年間の受入研修実績年度案件数受入人数国数201227299662013303166020143028364201529325622016343936716 ファイナンス 2018 Apr.

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