ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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●関税技術協力の実施形態技術協力の方法には、途上国の税関幹部クラスから最前線で活躍する税関職員に至るまで、様々な関係者を日本に招いて研修を行う「受入研修」と、日本国税関の専門家が海外でワークショップを開催して講師を務めたり、相手国職員に直接技術指導を行うために現地に赴いて活動する「専門家派遣」の2つに大別されます。税関研修所は、財務省関税局や各税関などと協力して、主に日本への「受入研修」の計画と実施を担ってきています。なお、専門家派遣については、1~2週間ほどの短期の派遣が主となっており、当研修所の教職員や税関職員がその任に就くこともありますが、中にはJICAの長期派遣専門家として2~3年の間、途上国の税関当局に常駐し、相手国税関が抱える関税制度や税関行政の改善課題を共に検討して、技術的な支援に従事している職員もいます。●税関研修所で受入研修を開始関税技術協力は、昭和45年(1970年)に海外技術協力事業団(現国際協力機構(JICA))の委嘱を受けて実施した「税関行政セミナー」から始まっています。これは、開発途上国税関の職員約20名を迎え、税関行政全般に関する2ヶ月間程度の受入研修を行なったもので、それ以降内容を進化させつつ現在まで継続実施されており、受入研修の中でも50年近く続く最も伝統的なプログラムの一つとなっています。以降、これまでに100以上の国及び地域から6,500名を超える税関職員を受入れてきています。●受入研修の種類受入研修にはスキーム別に大きく分けて3種類あり、一つはこの「税関行政セミナー」のようにJICAと協力して行うもの、次に世界税関機構(WCO)等の国際機関と協力して行うもの、そして、財務省関税局の二国間援助経費によるものとなっています。このうち関税局の二国間援助経費によるものは、日本が主導的かつ機動的に実施できるよう平成8年(1996年)から開始されたもので、途上国のニーズを個別に調査・把握した上で研修内容を設定するなど、現在では、受入研修の中核となっています。また、ユニークな取り組みとして、平成3年(1991年)から、WCOと協力してフェローシップ・プログラムを行っています。これは、各国の税関幹部候補生が、ベルギーのブラッセルにあるWCO本部でインターンとして4週間程度の理論的な研修を受けた後、当研修所においてさらに2週間程度の実地研修を行うもので、英語コースの他に仏語とスペイン語コースが設けられています(注)。さらに、WCOとは平成10年(1998年)からWCO奨学生の引受事業も行ってきており、政策研究大学院大学や青山学院大学の大学院において学ぶWCO留学生に対して、当研修所の教職員や日本国税関の職員などが講義や指導を行っています。注: 同様のインターン制度として、平成21年(2009年)から、キャリア・ディベロップメント・プログラムを開設しています。参加者は、WCO本部の専門職員として1年間勤務し、国際機関での仕事を通じて、税関分野にかかる国際標準の理解や、プログラム終了後に自国の制度や体制の改善に携われる能力の向上に取り組みます。税関研修所では、参加者に対し、日本国税関で様々な国際標準をどのように適用させているのか、2週間程度の実地研修を行います。関税技術協力受入研修の模様 ファイナンス 2018 Apr.15

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