ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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当研修所は、全国約9,200名の税関職員を対象に、税関を取り巻く環境の変化に的確に対応し、税関業務を適正・迅速に処理し得る職員を養成するとともに、税関行政の質的向上に資することを目的として、各種研修を実施しています。また、当研修所は、開発途上国の税関の近代化を支援するため、関税技術協力として、海外からの税関職員を受け入れ、貿易立国として我が国が積み重ねてきた改革・発展の経験を礎に、途上国税関の実情やニーズに即した技術支援プログラムを提供しています。●関税技術協力の意義税関分野の技術協力と言っても、具体的にイメージが浮かびにくいためか、「えっ、何ですかそれは?」と聞き返されることが多々あります。開発途上国の税関については、国内外の貿易関係者より、税関手続の不透明さ、通関に要する時間の長さ、担当職員の裁量の大きさや不安定さ、さらに汚職の存在といった懸念が常々指摘されています。特に、貿易や海外投資に大きく依存する我が国にとって、開発途上国の税関職員の能力向上は、輸出入貨物の不必要な遅延を解消させ、税関手続の適正・迅速化により通関コストの低減が図られ、相手国のみならず我が国企業にも有益な貿易・投資面でのビジネス環境整備へとつながることから、重要な意味を持つと考えてきました。そこで、開発途上国税関の改革・近代化を進めるための支援として、重要な租税収入源となっている関税の徴収の確保や効率化、税関手続の調和・簡素化を通じた国際貿易の一層の円滑化、グローバルなレベルにおける密輸阻止及びテロ対策等に貢献するような研修プログラムを策定し、これら懸念を解消する努力を積み重ねてきています。また、これら取り組みを通じて育まれた人的ネットワークにより、密輸情報の交換等の各種協力案件も促進され、正に関係者全員が利益を享受できるような枠組みを形成してきました。税関研修所の正面玄関及び研修棟関税技術協力に携わる職員及び参加者14 ファイナンス 2018 Apr.

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