ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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平成30年度事業承継税制の拡充について 主税局税制第一課 課長補佐 乾慶一郎1.事業承継をめぐる現状人口構成の高齢化が進む中、中小企業経営者の高齢化も急速に進行しています。2015年までの20年間で、経営者の年齢のピークは47歳から66歳にまで高まりました。経営者の平均引退年齢は、およそ70歳。中小企業庁の推計によると、2025年までに約245万人の中小企業・小規模事業者の経営者が70歳を超え、このうち約半数にあたる127万人が後継者未定とされています。このまま現状を放置すると、中小企業・小規模事業者の廃業が急増し、10年間で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があると推計されています。また、アンケートによれば、60歳以上の経営者で廃業を予定している方のうち、約3割は、その理由に後継者難を挙げています。休廃業・解散企業の5割は黒字であったというデータもあり、業績は好調で将来性のある企業であっても、後継者探しを含めた事業承継の準備が進まず、休廃業に至ってしまうケースが多いものと考えられます。一方、事業承継に成功した企業は、業績が向上しているというデータもあります。経営者の年齢が上がるほど、投資の意欲が低下し、リスクを回避する性向が高まる一方、経営者が交代した企業は利益率を向上させており、成長意欲も高い傾向が示されています。こうした状況を踏まえると、中小企業の事業承継は、日本経済の屋台骨を揺るがしかねない喫緊の課題であるとともに、生産性向上につながる重要なチャンスであるとも言えます。図表1 中小企業経営者の現状60歳以上の経営者のうち廃業を予定している者について、その理由38.2%27.9%12.8%9.2%6.6%3.1%3.1%0.4%0%10%20%30%40%当初から自分の代でやめようと思っていた事業に将来性がない子供に継ぐ意思がない子供がいない適当な後継者が見つからない地域に発展性がない若い従業員の確保が困難・事業の継続が見込めないその他28.6%051015202530歳~45歳~60歳~75歳(万人)20年間で経営者年齢の山は47歳から66歳へ移動1995年2000年2005年2010年2015年中小企業の経営者の年齢分布(出典)平成28年度 帝国データバンクの企業概要ファイルを中小企業庁にて再編加工(出典)2016年4月 中小企業庁「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会」資料(2016年2月日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」)8 ファイナンス 2018 Apr.

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