ファイナンス 2018年4月号 Vol.54 No.1
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(3)租税特別措置の適用要件の見直し所得が増加しているにもかかわらず、賃上げと国内設備投資のいずれも殆ど行わない大企業について、研究開発税制等、生産性の向上に関連する租税特別措置の適用を行わないこととしました。具体的には、所得金額が前事業年度を上回りながら、賃上げ率対前年度比が0%以下であり、更に国内設備投資額が当期の減価償却費の総額の1割以下である場合には、研究開発税制、地域未来投資促進税制及び情報連携投資等の促進に係る税制の適用を行わないこととしました(図表8)。企業収益が過去最大となる中で、賃上げや投資に消極的な企業に対しては、果断な経営判断を促していく必要があるとの観点から、当該措置が設けられました。(4)中小企業における賃上げの促進に係る税制中小企業における持続的な賃上げを促す観点から、賃上げ金額の一定割合の税額控除ができる措置を講じました。更に、高い賃上げを行い、かつ、教育訓練費増加等の要件を満たす場合には、税額控除率を上乗せすることとしました。具体的には、賃上げ率対前年度比1.5%を達成した企業について、法人税額の20%を限度として、対前年度賃上げ額の15%を法人税額から控除できる措置を講じました。さらに、賃上げ率2.5%を達成し、かつ(ア)・(イ)のいずれかの要件を満たした場合には、対前年度賃上げ額の25%を法人税額から控除できる上乗せ措置も設けました(図表9)。(ア)教育訓練費が一定以上増加(イ)中小企業等経営強化法の認定に係る経営力向上計画に記載された経営力向上が確実に行われたことの証明中小企業についても、平成30年度改正において所得拡大促進税制を見直すに当たり、賃上げについて、平成24年度に比べて一定以上増加という要件に代えて、前年度に比べて賃金を一定以上引き上げることを要件にするなどの見直しを行いましたので、この見直しにより、これから賃上げを行おうとする企業を強力に後押しできると考えられます。図表7 データの連携・高度利活用による生産性向上の具体的な事例事業所間連携、IoTデータ活用(製鉄)企業間連携(航空機部品製造)仮想「一つの製鉄所」による全体最適化●国内各生産拠点のデータをIoTを活用してシステム統合し、稼動状況のデータを自動継続的に取得してAIで分析。●競争上重要なデータを離れた地点間で連携させるため、暗号化の技術等を駆使したセキュリティ対策を実施。●これらのデータを予防保全の高度化や生産の全体最適化に活用することで、生産量の増加、納期短縮、故障発生率の低減などを実現し、大幅に生産性を向上。加えて、事業所間でデータ連携を行うことで受注と設備稼働状況の共有が図られ、余剰生産能力の活用や輸送コストの削減などを実現。産業の枠を超えた連携による生産の高度化●複数の中小部品メーカーが連携して、元来もっていた高い技術力を活かしつつ、量産に必要な生産管理手法を共有し、航空機部品の一貫生産体制を構築。●各社の原料調達・部品生産・納入等の稼働データ等を、横断システムを通じてリアルタイムに共有することで、各社が生産効率を最大化。●これにより、協業・分担体制の生産スピード向上や品質向上を実現し、大幅に生産性を向上。(経済産業省資料より作成)6 ファイナンス 2018 Apr.

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