ファイナンス 2018年3月号 Vol.53 No.12
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は、対前年度+356億円の62兆1,159億円と、前年度と実質的に同水準*5を確保している。その内訳としては、上述の地方交付税のほか、地方税収等が42兆48億円(対前年度+4,021億円)、地方特例交付金が1,544億円(対前年度+216億円)、臨時財政対策債が3兆9,865億円(対前年度▲587億円)となっている。(2)東日本大震災への対応について東日本大震災の復旧・復興に当たっては、平成28年度からの復興・創生期間においても、復旧・復興事業及び全国防災事業について、それぞれ別枠で整理し、所要の事業費及び財源を確保することとされている。その財源については、改正された復興財源確保法*6において、必要な措置が講じられた。A)復旧・復興事業費平成30年度地方財政対策においては、直轄・補助事業の地方負担分(公営企業債等により賄うこととされている地方負担額を除く)として3,201億円、地方単独事業分(単独災害復旧事業及び中長期職員派遣等)として624億円、地方税の特例減税措置等に伴う減収分への対応として403億円、合計4,227億円を計上した上で、その財源として、過去の繰入分のうち交付税特会からの支出見込みがなくなった970億円(年度調整分)を除く3,257億円を震災復興特別交付税として計上し、東日本大震災からの復旧・復興への対応に万全を期すこととしている。なお、この震災復興特別交付税の財源は、全額、東日本大震災復興特別会計(復興特会)から交付税特会に繰り入れられることとされている(返還金5億円を除く)。B)全国防災事業全国防災事業(全国的に直轄・補助事業として行われる緊急防災・減災事業)の地方負担分は、個人住民税の均等割の標準税率の10年間の引上げといった地方税における時限的な税制措置などの地方負担で賄うこととしており、この事業費と財源については通常収支分と別に整理されている。平成30年度の全国防災事業の公債費(これまでに発行した地方債の債務償還費等)は1,035億円(対前年度+89億円)であり、時限的な税制措置による地方税収728億円(対前年度+8億円)を上回る所要額306億円について通常収支より充当することとしている*7。なお、地方単独事業分については、平成24年度までは全国防災事業として実施されていたが、平成25年度以降、通常収支において緊急防災・減災事業費として計上している。3.おわりに上述のとおり、平成30年度においては、地方の一般財源総額について前年度と実質的に同水準を確保する一方、一般会計からの地方交付税交付金等については地方税収等の増を反映し、着実に抑制した。また、歳出の重点化・合理化の観点から、リーマンショック後の危機対応措置として9年間継続した「歳出特別枠」を廃止する一方、老朽化対策等をはじめ公共施設等の適正管理をより一層推進するため、公共施設等適正管理推進事業費を増額するとともに、「まち・ひと・しごと創生事業費」についても、昨年度と同額を計上している。国・地方を通じた財政健全化のためには、平成31年度以降も、地方財政について歳出・歳入両面における改革を着実に進めていく必要がある。このため、引き続き、地方財政においても国の取組と基調を合わせた改革に取り組み、メリハリを効かせた重点化・効率化等を図るとともに、地方の基金の必要性・内容の更なる分析や、各年度に必要となる財源保障の適正規模の精査等を行いつつ、財政資金の効率的配分を図る観点から、引き続き、必要な取組を検討していくことが重要である。*5)水準超経費を除いた地方の一般財源総額は、対前年度+56億円の60兆2,759億円を確保。*6)東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法。*7)全国防災事業の実施は平成27年度で終了し、平成30年度は、公債費及びこれに充当する歳入の計上となっている。18ファイナンス 2018.3特集平成30年度予算特集2地方財政対策について

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