ファイナンス 2018年2月号 Vol.53 No.11
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関の設立、証券会社の資本規制強化、などがPolicy Actionとされています。なお保険市場については、2018年以降世界銀行と共に支援を継続することが期待されています。バングラデシュの場合は、財政・対外収支は比較的安定していることから、財政的なモチベーションというよりは、優先順位の高い資本市場改革を着実に進めるために、当該政策を所管している実施官庁がADBのプログラムを導入したというところに特徴があります。*4(2)スリランカ-財政・対外収支危機を契機にスリランカの場合は、財政・対外収支の悪化がプログラム導入の直接のきっかけです。2015年初頭から資本流入の減速・外貨準備の減少の兆しがあり、2016年初頭には国債が格下げされ、海外投資家による国債保有の減少・株価の下落といった事態が発生しました。これを受け、2016年6月に国際通貨基金(IMF)主導で総額$2,150 million(約2,400億円)の経済再生パッケージが策定されました。当該パッケージの下、IMFは財政・金融政策、世銀・JICAは貿易・投資促進、(参考3)ダッカ証券取引所株価指数の推移Nov-10, 8,602.402,0004,0006,0008,00010,000Jan-06Jan-07Jan-08Jan-09Jan-10Jan-11Jan-12Jan-13Jan-14Jan-15Jan-16Jan-17DGEN IndexDSEXJul-16, 4,525.3Nov-17, 6,306.9ダッカの金融街(参考4)バングラデシュ―主なPolicy Actions第2次資本市場改革プログラム(BAN-CMDP2)第3次資本市場改革(BAN-CMDP3)1stTranche(12年12月完了)2ndTranche(14年12月完了)1stTranche(15年11月完了)2ndTranche(実施中・17年6月完了予定)$150 million$150 million$80 million$170 million13 policy actions13 policy actions7 policy actions18 policy actions*・資本市場改革計画の承認・改正証券法(SEC Act)の議会提出・銀行監督と証券監督の連携強化・銀行による証券投資規制・マージン貸出規制・社債私募発行手続の簡素化・国債プライマリーディーラー制度改革・財務開示法(Financial Reporting Act)の議会提出・証券行政審判制度の設立・証券取引所の株式会社化法(Demutualization Act)の議会提出・証券税制の改正(株式新規上場、債券取引)・保険市場改革計画の承認・改正保険法の実施・証券行政審判制度の運用開始・社債公募発行手続の簡素化・中央清算機関の規制フレームワーク策定・プライベートエクイティ・ベンチャーキャピタル規制の導入・証券税制の改正(ミューチュアルファンド)・財務開示法(Financial Reporting Act)の運用開始・証券監督当局の人員増・ITシステム・ガバナンスの強化・証券会社の資本規制強化・中央決済機関の設立・イスラム金融、上場投資信託、デリバティブ規制・変動利付け国債の発行・改正保険法の規則整備(保険会社による投資規制など)*4)第2次資本市場改革プログラムは年間$100 million(110億円)程度の規模で、これはバングラデシュのGDPの0.05%、総財政支出(中央政府)の0.4%程度と大きいとはいえません。しかし、実施官庁(財務省金融部門局)の予算規模と比較すると大きいため、実施官庁はプログラムの成果につき高い説明責任を負うこととなります。*5)ADBは財政・対外収支への懸念が顕在化する前の2015年からスリランカ政府と資本市場改革プログラムの実施に向け政策協議を行っており、IMF主導のパッケージの下で具体的な案件として実現しました。ファイナンス 2018.245海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連 載|海外ウォッチャー

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